死眼

「や、やめてください!」

 私は旧校舎のトイレで女子生徒たちに囲まれていた。家に帰ろうとしたら、強引にトイレに連れ込まれたのだ。旧校舎を選んだのはあまり使われていないからだろう。

「あんたさ、調子に乗ってるからむかつくんだよね! 可愛いからっていい気になってんじゃないよ! このメガネが!」

 リーダーらしき女子生徒――美乃梨みのりが私を睨みつけながら、口を開いた。

 私がいつ調子に乗ったというのだろうか。普通に日常生活を謳歌しているだけだというのに。ただ可愛いと思われていることはちょっと嬉しい。しかし、最後の一言はいただけない。メガネに罪はない。それに私がメガネをかけているのは。メガネをしなかったら、大変なことになる。

「あんたのメガネ、便器に流してやろうかな」

『賛成!』

 美乃梨の言葉に女子生徒たちが声を上げて賛成した。その瞬間、私は背筋が凍るのを感じた。何としてでも阻止しなければならない。美乃梨の手が私のメガネに迫ってくる。

「だ、だめ! メガネに触らないで!」

 私は必死に抵抗したが、女子生徒たちに体を押さえつけられ、メガネを奪われてしまった。忌まわしき眼が美乃梨たちの姿を捉え、『死眼しがん』が発動した。

 美乃梨たちは一瞬にして灰と化し、絶命した。

「だからダメだって言ったのに」

 私はため息をついた。『死眼』は私の意思とは関係なく、眼で捉えた者を灰にする能力だ。

 私は灰を集めると、カバンの中に入れた。


 ――ちゃんと供養してあげるからね。

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