落下注意

 私は友達と一緒に信号が青になるのを待っていた。信号を渡った先に私たちの通う学校がある。

 ぼんやりとしていると、町の中心に設置されている屋外拡声器から『動物園に輸送中、飛行船からワニが落下したとの報告がありました。国民の皆さんは注意してください』と聞こえてきた。

 輸送車だと渋滞に巻き込まれることも多く、現在では飛行船で動物園に輸送するのが一般的となっている。しかし、何かしらの動物が落下する事故が多発し、国民は悩まされていた。

 空を見上げると、ワニが手足をばたつかせながら落下している最中だった。たちまち町中がパニックに陥った。一匹だけならまだ良かったが、ワニは五匹もいた。

 ワニは空中でもがきながら道路に着地した。ゴムが落下の衝撃を吸収し、ワニに怪我はなかった。動物が怪我しないように、アスファルトはゴム製に取り換えられている。また太陽の熱を吸収できるように、黒のゴムが使われている。今はまだこの辺りの地域だけだが、全国の道路をゴム製に順次取り換える予定らしい。

 ワニたちは素早い動きで人々に襲い掛かった。何人かが手を噛まれ、悲鳴をあげていた。

 私も友人と一緒に逃げた。逃げていると、動物園の職員の姿が見えた。職員は慣れた手つきで次々とワニを捕獲していく。職員は頭を下げると、その場から立ち去った。人々から安堵のため息が漏れた。

 もう落下してこないようにと願いながら、私は友人と一緒に学校に向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る