　私はホームで電車が来るのを待っていた。せっかくの休日だし、どこかへ遊びに行こうと思い立ったのだ。

　ホームの向こうから電車が来るのが見えた。私は人の波をかき分けながら、電車に乗る。

　何とはなしに景色を眺めていると、尻に違和感を感じた。誰かに触られている。ぶん殴ってやろうと後ろを振り向くと、爽やかな男性が立っていた。

　面食らいながらも、視線を下げると、私の尻をがっつりと触っていた。あまりにも爽やかな笑顔で痴漢しているから何も言えなかった。笑顔が怖い。

「何をしているんだ！　この変質者め！」

　突然声が聞こえた。声のした方を見ると、上半身裸でブルマを穿いた男が立っていた。いや、変質者はあんただ。痴漢さんも爽やかな表情から一転し、無表情になっている。

「さあ、こっちへ来るんだ！」

　変質者は痴漢さんの手を引っ張り、電車を降りた。私も慌てて電車を降りる。

「駅員さん！　痴漢ですよ！　さあ、早くこの人を警察に――え？　どうして俺を連れて行くんですか？　俺は痴漢してないですよ！」

　変質者は駅員に連れて行かれた。当然だ。この中で変質者は誰と問われたら、迷わずにあんたを指差す。

　痴漢さんをチラリと伺うと、何とも言えない表情をしていた。これも何かの縁だ。私は痴漢さんに近づいた。

「あの、もしよろしければお茶でもしませんか？」

「え？　あ、はい」

　痴漢さんは戸惑いながらも頷いた。

　私は痴漢さんの手を引っ張り、駅の階段を降りる。

　その後、私は痴漢さんと付き合うことになりました。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい