第29話 カノンはものすごいお金を稼いでいるらしい?
無事にオープニングステージを終えて…
赤宮 カノン楽屋にて。
「カノン、お疲れ様」
「うん、ありがとう姉さん」
私は椅子に座って身体を休めた。
それにしても一人でトークは辛い。自分が喋らないと会場が静まりかえっちゃうし。もう慣れたから大丈夫だけれど。
ステージというものは実際のところ一人で行うことは少ない。いや、無いと言ってもいいかもしれない。
何故なら、一人でステージをしてしまうと、その人のトークが止まってしまうとステージはそこで成り立たなくなってしまうから。また、残念なことだけど、キャストが豪華では無いほど来る人も少なくなってしまう。それは人数を増やすことで多少は補うことができる。
一人でステージをやらない理由の一番の理由は、失敗だけはしてはならないから。それを全て補えるのは赤宮 カノン、そして他には両手で数えられる程度ぐらいの人しかいないだろう。逆を返せば、その人は声優界でトップクラスの人気を誇っているということ。それでも私は頑張らないと。より多くの人を笑顔にするために。そして私の夢のために。
「じゃあ、カノン、次のステージは最後のステージだから結構暇があるね。どうする?」
「うーん…どこかで食べてく?」
姉さんとはいつも一緒にいるけれど、外食はあまりしていない。というか、できていない。だからして見たい。
「でも…カノンって目立っちゃうし…」
「ね?お願い。近くのフードコートでいいから」
そこで欠かさず上目遣い。
「うっ、上目遣いは酷い…断れないじゃん。わかったから。でも一つ約束して?」
「何を?」
「行くお店は絶対貸切にするから。それだけは約束。ね?」
「わかった。約束する」
「うん。じゃあ手配するから少し待っててね、カノン」
「わかった」
これで姉さんと外食ができる。嬉しい。
「すみません、赤宮 ですがーーー」
そして姉さんは電話を始める。どこに電話してるんだろ?気になるなぁ。ちょっとだけ。
「ーーーはい、買収お願いね?うん。ありがとう」
買収!?
私はしばらくして電話を終えた姉さんに聞いた。
「姉さん、さっき買収とか言わなかった?」
「うん。マネーを使ってこれから楽に外食できるように一つフード店を買収したの」
「そ、そうなの…でもすごいお金かかったんじゃない?」
「そうだね…えっと…」
姉はスマホを取り出してその額を計算する。
「ざっとこんな感じかな?」
「っ!?」
普通にすごい額なのだけれど…
「大丈夫だよ?カノンはこの一年でそれ以上を普通に稼いでるんだから。それに買収なんて初めてじゃ無いし」
「えっ?」
「カノンが止まってるホテルとかも私がしっかり買収してるんだよ?もちろん海外のところもね?スマホとかも全部無料でしょ?」
「………」
「本当に大丈夫…なのかしら?」
「うん、全然大丈夫だよ?」
「は、はぁ…」
何にも返す言葉が浮かばない…
「じゃあ行こう!」
私は困惑しながらも、姉さん続いて歩き出した。
余談だが、納税の時にその金額を偶然にも見てしまったカノンは、驚きすぎて気絶したとかしてないとか。
声優さえできればいい 東郷 アリス @Togo1053
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