第18話 ドキドキした時間
結花奈が俺の前から去って。
「ふう…」
やっと一人になれた…と思った時。
俺の肩を叩く奴がいた。
今度は誰だよ!と思いながら後ろを振り返ると。
「賢太郎か…」
「何だよ。俺を見たらがっかりしやがって。まあ、それはどうでもいい。いや、良くはないな」
いや、どっちだよ。
「いや、やっぱどうでもいいか。うん。どうでもいい」
あっ、結局どうでもいいんですか。
そうですか。
「それよりだ!昨日アプリであったと思うが赤宮 カノンと会ったんだぜ!どうだ、すごいだろう!」
「ふーん」
「何だよ。そんなに驚かないな」
そりゃ自分ですから。
「それで聞いてくれよ!」
「ん?」
「俺たちの班全員、赤宮 カノンのサイン入り、声優さえできればいい三巻を貰ったんだがな」
「ふーん、よかったじゃん」
「それがな、きりん。良く見てみろよ」
賢太郎がその本をバッグから取り出して俺に見せる。
が、どこにもサインらしきものはない。
「サインが…ない?」
「そうなんだよ!女子のほうは全員サイン入ってるのに俺のだけないんだよ!」
サイン無しのやつ貰ったのお前だったか。
三つサイン描いたらなんか飽きてそのまま渡しちゃったんだよな。
「ごめん、じゃあ今書くよ」
俺はその本にサインを書いていく。
「はい…って賢太郎?」
「お前な、俺は赤宮 カノンのサインが欲しいんだよ。お前のは望んでいない」
あ、今はきりんだった…
「そ、そうだよな。今度カノンに貰っておくよ」
「ああ、頼んだぞ!俺の友達が赤宮 カノンの弟で良かったぜ!」
「あはは…」
「てかきりん?」
「うん?」
「このサインすげーうまいな!本人って言っても誰にもバレないぞ!」
いやー、本人ですから。
「もしかしてお前が赤宮 カノンだったりして?」
「えっ?…ち、違うに決まってんじゃん!何言ってんだよ!俺は男だぞ!」
「そうだよな!悪い悪い。お前が赤宮 カノンな訳ないよな!じゃあ、今度赤宮 カノンにサイン貰ってきてくれよ。よろしくな!」
そう言って賢太郎は自分の机へ戻っていった。
そんなドキドキな会話が終わったことに俺は安心し、ホっと一つ息を吐いた。
そして今日も学校での生活は、いつも通りに過ぎていった。
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