コロし屋シリーズ 暗殺ライオンと黄泉替えの魔眼

@Gosakuri

第1話

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桜の王国マンカイハナミ。国中の各通りや各所に桜の木が植えられていて、春になると国を覆うほどの美しい桜が咲く。それを見ようと多くの旅行者がやってきて、マンカイハナミは春中お祭りのように賑やかになる。

季節は春。マンカイハナミ王国に、多くの旅行者が馬車に乗ってやってきて、観光や花見などを満喫する。

そんな中、1人の女の子が路地裏を必死に走る。その後ろには、黒いスーツを着た男3人が追ってきていた。

女の子を追いかける男達は、どう見ても一般人ではない。暴力や恐喝など、非合法な手段で飯を食べている人間である。

 そんな男達が追いかけている女の子は、顔立ちは可愛らしく、高級な洋服を着ていて、どこかのお嬢様っぽい。怪我をしているのか、右目に眼帯を付けている。

 金持ちの娘を誘拐しようと、追いかけているのだろうか。

 女の子は、路地裏にあるゴミ箱やら誰かが不法投棄した空箱や木材やらを倒して、なんとか男達を撒こうとする。しかし、男達はしつこく追いかけてきて、ついに女の子は捕まってしまった。

「やっと捕まえたぞ! このガキめ!」

「やだっやだっ! 放してっ! 触らないでっ! だ、誰かぁあ!」

「おい! 黙らせろ! 口に布でも詰めとけっ!」

 ポケットからハンカチを取り出した男が、少女の口にそれを詰めようとする。

「やぁあ!」

 女の子は、その男の親指をガブッと噛んだ。

「いでっ! このクソガキがっ!」

 噛みつかれた男は逆上して、女の子の頬を乱暴に叩いた。女の子の口の角が少し裂けて、血がツツーと垂れる。

「・・・うぅ」

 女の子は叩かれたショックと痛みで、抵抗する気力がなくなり、ガクリと項垂れる。

「おいっ! バカっ! 手加減しろっ! あの夫婦に殺されちまうぞっ!」

「だってよ。このガキが、俺の親指をよ~。ったく。手間とらせやがって。さっさと連れていくぞ」

 男達は女の子をどこかへ連れていこうとした。

 そのとき、上から一人の男の子キング・アサシンが下りてきて、フワッと男の肩に乗った。その瞬間、その男の視界は逆さまとなった。なぜなら、キングに首の骨を折られ、頭部を百八十度逆さまに回されたからである。

 女の子を連れていこうとした男は悲鳴を上げ、もう一人の男は懐からリボルバー式拳銃を取り出した。銃口をキングに向ける前に、額にナイフが深々と刺さった。瞳がグルンと上を向いて、男はバタッとコンクリートの上に倒れた。突き刺さったナイフはスーッと消えていった。

「ひぃ! ひいいいいい!」

 最後の1人になった男は、情けない声を上げながら、女の子を放って逃げようとした。だが、後頭部にナイフが命中して、そのまま俯(うつぶ)せに倒れ込んだ。

 キングは首の骨を折って、絶命させた男の肩から飛び降りる。マリオネットの糸がプツッと切れたように、その死体は倒れた。

「大丈夫?」

 そう聞きながら、キングは倒れている女の子へ近づく。

「うぅ・・・」

 どうやら女の子は、気を失っているようだ。首の骨を折られ、逆さまとなった男の顔面を見たショックが原因である。

 キングは女の子を抱っこしたまま壁から壁を蹴って上へ跳び、建物の屋根へ乗って、泊っている宿に向かって駆けていった。

  

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 桜の王国マンカイハナミで、最も旅行者に人気を誇るソメイヨシノ大通り。そこは王国の中心部にあり、桜だけではなく、美味しい食べ物を販売する出店や道具を用いて遊ぶ出店などが多く立ち並ぶ。

 その大通りには、質の良い宿がたくさんある。どれも値段は高いが、春になると旅行者が津波のように押し寄せてきて、あっという間に満室になるほどだ。

 その中で最も高級な宿の一番高い部屋に泊まっている一家がいる。貿易国スンゴラのスラムで暮らしているアサシン家である。

 その当主のピノ・アサシンは、開いている窓から入ってくる春のそよ風を感じながら、マンカイハナミ王国製造の高級酒を猪口(ちょこ)に注ぎ、クイッと口に含んで味わいながら飲んでいた。


 ピノ・アサシン。性別は女性。年齢は30代後半。見た目は20代後半の若さを維持している。スレンダーな体つきでスラリと背が高く、どんな衣装も着こなせるスタイルと美貌を持っている。

髪は色が赤くて、型はショートベリーショートでボーイッシュに整えている。瞳も髪の色と同じ赤で、右目から額にかけて火傷が残っている。

服装はカジュアルを好み、スカートなどヒラヒラした物は絶対に身に着けない。暖かい季節はシャツの下にタンクトップ、ジーンズといった出で立ちで過ごす。

女性なのだが、服装と高身長のせいで男性にしか見えず、顔も良いことから同性ばかりにナンパされる。

特殊人間コロし屋の1人で、暗殺と呼ばれている。その特殊能力を活かして、殺し屋を営んでいる。


 ピノの向かい側には、アサシン家の召使いヴァニーガールが座っていて、主と同じように猪口(ちょこ)で酒を飲んでいた。


 ヴァニーガール。あだ名はヴァニー。性別は女性。年齢は本人すら不明。外見は20代前半ぐらいの若さである。

ピノとは違いグラマーなボディをしていて、煽情的な服装を好む。小悪魔のようなキュートで意地悪な顔立ちをしている。綺麗な黒髪をロングに伸ばしていて、ストレートに垂らしている。

顔立ちと体つきからよく男共にナンパをされるが、受けたことは一度もない。それもそのはず。彼女はレズビアンで重度の女好きだからである。男など眼中にない。見た目が良ければ、彼氏がいようが既婚者だろうがエッチ目的で口説いて落とす。

ピノとは主従関係にあるが、対等な立場のように喋るし接する。

ちなみに彼女はアサシン家の召使いであると同時に、魔法使いでもある。


 ピノは空になった猪口(ちょこ)をテーブルに置いて、口を開く。

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