天地開闢

白銀 蒼海

『二人なら』

「私、地球が滅んでよかったって思っちゃったの」


 面食らってしまった。まさかそんなことを思っていたなんて。


「どうして?」

「だって、貴女に逢えたから」

「なんだ。それは私も一緒だよ」


 私は左手で握った彼女の右手を、より強く握り返した。


「ねぇ、こわい?」

「…こわいかな。」


 私は目をつぶる。


「こわいけど、でも――」


 あの時とは違い、諦めるためじゃない。やるべきことを、思い出すために。

 目を開けて、笑いながら答える。


「みんなが守ってくれる。それに、隣にはエルがいる」


 彼女は少し下を向いた。そして、優しく微笑んだ。


「じゃ、私も隣にミキがいるから平気かな」

「そっか。よかった」


 私たちはお互いに、握った手を離す。

 もう大丈夫だから。手を繋いでいなくても、隣にいるから。


 二人で空を見上げる。天候は最悪だ。


 天を穿つ雷鳴。

 地を抉る暴風。


 それでも行く。二人なら行ける。

 私は剣を、彼女は拳を握る。


 セカイを取り戻すため?

 大切なものを守るため?


 建前はもう十分だ。


 だから、ここにいる理由は。


 あのイカれた男を。


 理不尽をぶった切るッッ!


 覚悟は決まったか?進む準備はできたか?


 じゃあそろそろ…


「行こう」「行くか」


 ――身体の震えは、いつの間にか止まっていた。




 これは序章。

 私たちの物語の始まり。

 長い長い長い人生が、いざ開幕。

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