赤信号 携帯電話 終夜

浮左志知

Scene 0

 暗い部屋の中で、一人の少年がパソコンを操作していた。彼が見ているのは、白や黄色や赤などの、目がチカチカするような背景をしたホームページだ。

 その名も『描き手の集い』。

 誰もが簡単にイラストレーションを掲載したり、閲覧したりできるサイトだ。ただ知名度は低く、運営側はなんとか利用者数を増やそうと様々な努力をしていた。

「今日も増えてない、か」

 少年は小さく呟く。

 少年はこのサイトを運営しているわけではないし、運営側の血の滲むような苦労も知らない。

 彼が増えていないと言ったのは、あるイラストの閲覧数だった。

 クリックの乾いた音が、暗い部屋の中に響く。少年がサイトを閉じた音だ。少年のパソコンの画面には、デスクトップ画像に設置された、そのイラストが映っていた。

「……寝るか」

 少年はパソコンをシャットダウンすると、隣にある自身のベッドへ身を投げ出した。

「あーあ……」

 そして少年は気だるげに呟いて、そのまま眠りに落ちた。



 少年はまだ知らない。

 その一つのイラストが、どんな意味を持つのかを。

 その一つのイラストに、どんな想いが込められているかを。

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