ぼくたちのテレビ史

前置き

「Wikipediaを小説にしてみたい」

　そんな出来心（できごころ）が　たぶん　しばらく前から　あったんだと思って　無意識のなかで躊躇（ためら）い　そういう行為に踏ん切りがつかず　膨（ふく）れ上がった出来心を　これ以上　棚上げにすることも出来ず　平成期の終わりに　「Wikipediaを小説に仕立て上げる」という　途方もない愚か者の行いに　あえて積極的（ポジティブ）に　手を染めることを　どうか　僕の死んだお祖父（じい）ちゃん　許してください

　僕が　「Wikipediaを小説に仕立て上げる」という愚行（ぐこう）のなかで　対象（ひょうてき）にしたのは　テレビ番組に関する記事だった　この企（くわだ）てのキャッチコピー　（平成３０年間のテレビ史を～）　の精神にのっとり　これから　Wikipediaの　平成期に放映されていた　または放映継続中である　テレビ番組の記事を中心に　小説に仕立て上げていく　あるいは　それは　「小説」とは呼べない代物になるかもしれない　散文で書かれるフィクションと小説は同義語であるやいなや

　僕がいつも　Wikipediaをいじっていながら　強い興味を持ち続けていたのは　フジテレビの歴史だった　現在放送されている　フジテレビ系列の番組は　競馬中継番組しか観ない　それなのに　なぜ　僕はフジテレビという放送局に　強い執着を抱くのか　じつは　自分でも上手く説明できないのだ　

　ただ僕は　Wikipediaという玩具（おもちゃ）で遊びながら　フジテレビ系テレビ番組の記事を絶えず閲覧するという不可解な努力の継続の中で　知らず知らずのうちに　Wikipediaのフジテレビ系テレビ番組の記事を閲覧するという行為を　フジテレビにチャンネルを合わせフジテレビの番組を視聴するという行為と　「同一視」していた　つまりは　はやい話が　僕はWikipediaを閲覧しながらほんとうはフジテレビを観ていたのだ