第84話 続・三人だけのクエスト
続・三人だけのクエスト
俺達が入ると、前回と同様、小人達もついてきた。そして、扉が閉まる。
「お~、迷える子羊よ! よくぞここに参られた!」
ゾンビ神父が両手を広げて話しかけてくる。
ここまでは前回と全く同じだ。
だが、ここからが違った!
奴は俺を指さす!
「何と! 守るべきはずのそなたが、その者達に守られて来たと言うのか! 何とも嘆かわしい! なるほど、貴様が俗に言う、『ヒモ』と呼ばれる存在のようじゃな! その腐った性根、叩き直してくれよう! 者共、かかれ!」
へ?
何この展開?
まあ、理由は想像できる。
小人達は俺を姫認定したようだが、こいつはそうではないのだろう。
俺がパーティーリーダーなのがいけなかったと見た。
カオリンかローズにしておけば、また別の展開だった可能性が高い。
そして、小人達は、俺に来るかと思いきや、分かれてカオリンとローズに群がった!
「え? 何すか? 動けないっす!」
「ちょっとシン! こんなの聞いてないわよ!」
カオリンとローズには、小人がそれぞれ三人ずつ。両腕と片足にへばりついている。
二人共、両腕を広げさせられ、十字架に磔にされている体勢だ。
ふむ、前回の俺もこんな感じだったな。
見ようによっては、少し危ない。
「なんか、分らんけど、展開がかなり変わったようだ。それ、絶対に取れないから、暫く見ててくれ。」
気付くと、二人は祭壇の奥に、並んで磔状態のまま立たされている。
ふむ、どうやら今回は、俺が王子役にさせられたようだ。
前回のローズは、台本通りに演技をしてコンプだったようだから、俺も何か芝居をすればいいのだろう。
俺は足元を見る。
ローズの話ではメモが落ちていたのだが……。
何も無い!
なら、どうしろと?
すると、ゾンビ神父が叫ぶ!
「だから言ったであろう! 貴様の性根を叩き直すと! エターナルバインド!」
ふむ、これは俺も喰らったな。確か、『行動不能』なんて訳の分からない効果だ。
そして、これはカオリンとローズに唱えられたようだ。
先程までは、カオリンが激しく抵抗していたが、今は全く動いていない。
「へ~、こういう状態になるんすね~。『行動不能』ってのは初めてっす。」
「ちょっと、何よこれ! あんた覚えてなさい!」
う~ん、カオリンの指す『あんた』はどっちだ? このゾンビ神父か? それとも俺か?
「よく分らんが、お前を倒せば一件落着でいいのか?」
俺はゾンビ神父を指差す。
「そう! 我を滅ぼせばそなたの愛しい者達は解放されよう! では、二股ヒモ勇者『シン』よ! そなたの『ローズバトラー』と、『カオリン』の為、かかって来るが良い! 我が全力で相手してやろう!」
ふむ、ここは一緒と。
二股ヒモ勇者ってのにはむかつくが。
で、台本は?
俺は辺りを見回すが、ローズが持っていたようなメモ用紙は何処にも落ちていない。
「では、成敗してくれよう!」
奴の両手に、それぞれ杖と剣が出現する!
う~ん、台本無しなら、アドリブでやるしかなかろう。
適当に合わせていればいいか?
奴が俺目掛けて剣を振るう!
剣先が真っ白に光る!
「勇者滅殺剣!」
ふむ、前回、ローズは全くダメージを受けていなかったし、ここは大人しく受ければいいか?
しかし!
俺の読みは甘かった!
激しい振動が俺を襲う!
げ!
一撃で4000って!
半端ない威力だ!
俺は考えを切り替える事にした。
これは普通に戦って倒さないといけない!
「オールアップ! グランドヒール!」
うん、これで一先ずは安心だ。
そして、俺は装備を杖から弓に持ち替える。
すると、奴は今度は杖を振り翳す!
「は~っはっはっ! いい気味よ! 続けて喰らうが良い! 炎『ダメージキャンセル!』獄!」
視界が真っ赤に染まるが、熱くは無い! 成功だ!
しかし、このスキル、神器クエストの奴だろ!
推奨レベル80で、それは無いだろ!
カオリンとローズは大丈夫かとHPを確認してみると、全く減っていなかった。ふむ、俺だけ狙ってくれているようだ。
そして、二人共驚いた顔をしている。
そらそうだ。前回とはあまりにも違いすぎる!
「ほほ~。少しはやるようだな。」
「ああ、そのスキルは散々無効化してきたからな!」
俺は少し間合いを取って、弓を構える。
そして、撃つ!
撃つ!
撃つ!
撃つ!
ブルには勝てないが、かなりの連射速度のはずだ!
「ぬぉ~っ! ヒモで二股でも流石は勇者! なかなかの攻撃だ! だが…『メテオアロー!』」
俺は最後まで喋らせず、スキル攻撃を使う!
うん、いい加減むかついてきた。
そして、かなり効いているようだ。これで奴のHPゲージが半分くらいまで減った。
「き、貴様! 飛燕『ダメージキャンセル!』斬鉄剣!」
剣がブーメランのように回転しながら俺に飛んで来た!
ふむ、剣の遠距離攻撃スキルか。でも、こつが剣の方を構えた瞬間でバレバレだ! おまけに光るし。なので、当たり前のように無効化してやる。
「す、少しは……」
「メテオアロー! メテオアロー! メテオアロー! メテオアロー!」
うん、さっさと片づけよう。
MPも大分減ったが、まだ回復するくらいは残してある。いざとなれば布袋の巾着も、アマテラスの涙もまだあるし。
だが、これで決まってしまったようだ。
「ぬぉ~っ! 流石は二股勇者シン! 此度は我の負けを認めてやろう! しかし、我は滅ぼせても、次の試練が待っておるぞ! わ~っはっは! ぐふ。」
ゾンビ神父は意味深な台詞を残し、光の輪と共に消えた。
そして、あの柔らかい光が、カオリンとローズに差し込んできた。
「え~っと、これで終わりでいいのかな? でも、散々言ってくれたよな~。ヒモだの、二股だの。まあ、否定のしようがないのが辛いところなのだけど。」
二人を見ると、まだ拘束は解けていないようだ。
だが、ローズは口先を突き出していやがる!
「シンさん、は、早くキスして下さい!」
カオリンは少し顔を赤くして、じっと俺を見つめている。
「あ、あたしが先よね!」
ぶはっ!
俺はゾンビ神父の残した言葉の意味を理解した。
これから泥沼の展開を味わえということだろう。
「二人共、愛している。」
俺は両手で二人を抱き寄せる。
ここで二人の拘束が解けたようだ。
二人共俺に抱き着いてくる。
最初はカオリンに、次に、ローズに口づけする。
ローズも文句を言う訳ではなく、満足そうに眼を閉じる。
視界に大きくロゴが流れる。
『CONGRATULATION!』そして、『最愛の人と結ばれろ! クエストコンプリート!』
ふむ、これでも一応コンプと。ここでもめなければOKってことか?
しかしこれ、普通にコンプするより絶対に難しいだろ!
ギルドルームに戻って、今回得たものを確認する。
ぶっ!
称号が二つも手に入って居る!
『カオリンの恋人』
これはいい。効果も前回のと一緒で、全てのステータスが15%アップ。
ちなみに、カオリンにもちゃんと、『シンの恋人』という称号が手に入ったようだ。
問題はこいつだ!
『女の敵』
色々試したところ、カオリンとローズが同時に『シンの恋人』という称号を着けると、勝手に装備されるようだ。
そして、効果は全く変わらない。15%アップのままだ。
見せしめの為だけの称号か?
カオリンはローズと違って、恥ずかしいからこれは絶対に着けられないと言っていたから安心だろう。
でも、持っている事が大事だとか嬉しい事を言ってくれる。
まあ、それは俺も同じか。
しかし!
この称号、誰かの怨念を感じるのは気のせいだろうか?
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