いつもの

カゲトモ

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「こんばんはー」

 すぐに開いて閉じた扉に目をやると、パタパタと洋服を叩く女の子が一人。何もこんな天気の時に来なくても、なんて台風でも店を開けている俺も俺だけど。

「いらっしゃい」と声を掛けると、彼女は二ィッと目を細めて微笑んだ。

「久しぶり、元気にしてた?」

「うん、元気だったよ」

 跳ねるような足取りで入って来たのは堀川さんだった。短くて明るい髪はパーマが当ててあって、本当に羽が生えているように軽やかだった。

「あれ? 雰囲気変わった?」

「ふふ、子供っぽくなった?」

 黒いロックTシャツにダメージの入ったショートパンツ。確かに以前見た時はもっと大人っぽかったかもしれない。メイクも今のナチュラルな感じじゃなくて、もっと濃くてヴィジュアル系って感じの。頑張っている感じは否めなかったよね。

「ううん、堀川さんっぽくて可愛いよ」

「可愛い?」

「うん、良く似合ってる」

「でも元に戻しただけだし」

「正直そっちの方が俺は好きだな」

 だって彼女のチャームポイントは頬にあるキュートなそばかすだと、ずっと前から思っていたもの。気にしているみたいだからあえて口にはしないけど。

「私も、こっちの方が自然と呼吸が出来る感じがするんだよね」

 ふぅ、と深く息を吐いてみせて「くくく」と笑った。やっぱり彼女には活発な笑顔がよく似合う。

「今日はどうする?」

「いつもので」

 なんて堀川さんはサラリとオーダーする。予想外だったからつい頬がゆるんだ。

「えへへ、一度言ってみたかったんだ」

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