いつもの
カゲトモ
1ページ
「こんばんはー」
すぐに開いて閉じた扉に目をやると、パタパタと洋服を叩く女の子が一人。何もこんな天気の時に来なくても、なんて台風でも店を開けている俺も俺だけど。
「いらっしゃい」と声を掛けると、彼女は二ィッと目を細めて微笑んだ。
「久しぶり、元気にしてた?」
「うん、元気だったよ」
跳ねるような足取りで入って来たのは堀川さんだった。短くて明るい髪はパーマが当ててあって、本当に羽が生えているように軽やかだった。
「あれ? 雰囲気変わった?」
「ふふ、子供っぽくなった?」
黒いロックTシャツにダメージの入ったショートパンツ。確かに以前見た時はもっと大人っぽかったかもしれない。メイクも今のナチュラルな感じじゃなくて、もっと濃くてヴィジュアル系って感じの。頑張っている感じは否めなかったよね。
「ううん、堀川さんっぽくて可愛いよ」
「可愛い?」
「うん、良く似合ってる」
「でも元に戻しただけだし」
「正直そっちの方が俺は好きだな」
だって彼女のチャームポイントは頬にあるキュートなそばかすだと、ずっと前から思っていたもの。気にしているみたいだからあえて口にはしないけど。
「私も、こっちの方が自然と呼吸が出来る感じがするんだよね」
ふぅ、と深く息を吐いてみせて「くくく」と笑った。やっぱり彼女には活発な笑顔がよく似合う。
「今日はどうする?」
「いつもので」
なんて堀川さんはサラリとオーダーする。予想外だったからつい頬がゆるんだ。
「えへへ、一度言ってみたかったんだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます