第29話
するといきなり、琴美が咳き込み出した。一体何が起こっているのか。すると突然、琴音が口を開く。
「別の刑事さん呼んで、あなたはもう来ないで」
「どうしてだい。どうしたどうした。大丈夫か」
咳き込む琴美の背中をさすりながら刑事が問うと、琴音は無理やり刑事の手を琴美から遠ざけた。
「来ないでって言ってるでしょ。まだ分かんないの」
「だから何で」
刑事の声も自然と低く、大きくなる。
「あなたタバコ吸ってるでしょ。タバコの匂いがしてるわ。妹はタバコに弱いの。ちょっと煙を吸っただけでも咳が止まらなくなって呼吸が止止まった事だってあったんだから。それに、タバコ道端に捨てるなんて。町の安全を守る前に、周りの環境を守るべきなんじゃない?」
一気に言葉を吐き出す琴音の肩を、琴美が叩く。
「お姉ちゃん…」
「琴美。何も話さなくて良いよ。ゆっくり息しようね。スーハー…」
「じゃあな」
「その前に、あなたまだ何か忘れてない?」
「聞き込みはその別の刑事さんとか言う奴にやらせるし、忘れてることなんか…」
「謝ってよ。妹をこんな目に遭わせてるんだから、まず謝るべきなんじゃないの。それで、もう絶対にしませんって言うべきだと思うけど」
「はいはい。悪かったな。じゃあ」
「逃げるの?」
「なんだよ。ちゃんと謝っただろ」
「まだ言ってないでしょ。これ以上、他の皆にも同じ苦しみを味わせないように」
「もうしません。はい。これでいいか」
「言葉だけじゃなくて、ちゃんと実行に移してよ」
「へいへい。じゃな」
刑事が立ち去ると、琴音は大きく溜息をついた。なんだか無駄にエネルギーを使った気がする。
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