第27話

いきなり地震のような揺れが起こったと思ったら、黒い集団が部屋の中を埋め尽くして行く。琴美はさらに恐怖心を感じ、泣き出す。琴音は妹を抱き締め、背中をさする。

「富岡健吾。幼児誘拐の現行犯で逮捕する」

琴音はいきなり現れた黒い集団が刑事だと分かり、急に力が抜け足の感覚が無くなって行くのを感じる。

「大丈夫かい。君たち」

「きゃー」

叫び声を上げたのは琴美だ。わんわん泣きながら、やめて、やめてと懇願している。琴音はそこでハッとなって、再びゆっくりと立ち上がった。

「大丈夫。この人たち、刑事さんだから。私たちを助けに来てくれたんだよ」

「刑事…さん?」

「そうよ。悪い人をやっつけに来てくれたのよ」

琴美は首を傾げ、刑事を一人ずつ見定めるようにじっと見つめると、琴音の目に焦点を合わせ、にかっと微笑んだ。

「お姉ちゃんお腹すいた」

「そうね。帰ったらご飯いっぱい食べようね」

「もうご飯出来てるかな」

「どうだろねー…あっ琴美、頭痛いのどう?」

「まだちょっと痛い」

「そうか…帰ったら高坂さんに診てもらおうね」

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