第15話 先生は教室からでられない
episode15 先生は教室からでられない
「こうして、教壇に立っているから先生なんだよ」
席に着いた生徒たちをみまわして木村先生はいった。
生徒の中にバンパイアの子どもたちが増えてる。
宇都宮餃子。
ニンニクが粒のまま豪華にはいっている。
それを幾ら食べても、バンパイアを忌避することはできない。
まあ幸い、バンパイアが活動する夜には教室をでることはできない。
塾の先生だからな――。
木村はつづけた。
「夏休もこの街の学校は休まない。生徒は毎日、学校に行く――。部活で運動だけやっていればいい。とはわたしは塾の先生だから、言えないんだよな。勉強しっかりやって、ハイレベルの高校に合格してよ。いつ、勉強するか、イマデショウ」
だれも笑わない。
バンパイアの子どもたちは、うとうとうたたねをしている。
盛り場をうろつき捕食活動に精を出す親たちについてまわっているからだろう。
寝不足なんだよ。
起こすのもかわいそうだから、そのままにしておく。
すやすや可愛らしい寝息をたてている。
まわりの友だちをいじめないだけでも、人間の子どもよりはるかに優れている。
イジメて、死に至らしめる。
イジメて、簡単に友だちをころす。
根性焼き。殴る。蹴る。首をしめる。ナイフで殺傷する。
人間の方が、はるかに怖い。
子どもが、孫が、嬉々として親や、祖父母をころす。
恐いですね。怖いですね。
きらめく鋭い犬歯で、牙で、あなたは頸動脈を噛みきってもらいたいですか。
あれは小説や映画、テレビの世界の出来事です。
「わたしは、夜間授業の塾の先生です。この教室からはでられません」
でられたとしても、街を彷徨しても怖くない。
だって、バンパイアはひとを殺す事はしない。
Just one bite. ほんの一噛み。ひと啜り。
痛みもない。
蚊にさされたようなものだ。
でも人間とむすばれて、子どもを増やすのは感心しないな。
生まれながらのバンパイア。
子どものときから、すでに将来がきまっているなんてかわいそうだよ。
「さあ、勉強しょう。余計なことはかんがえないで、勉強しょう」
それがこの街から脱出できる唯一の方法なのだから。
「先生は教室からでられない。ここからみんなの輝かしい未来を祈っているよ」
永遠にこの教室で教えつづける。
死ぬことはない。
だって、昔、オリオン通りでバンパイアに噛まれているのだよ。
だから結婚もしないで、塾生をわが子と思い、毎晩、教壇にたっているのだ。
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