第5話 図書室の二宮金次郎
episode5 図書室の二宮金次郎。
図書室をのぞいてみました。
二宮金次郎のような正しい姿勢で、座っている生徒がいました。
図書室をのぞいてみました。
昼休みも終わった。
ちょうど、一時です。
二宮金次郎。
のような。
石像が本をよんでいます。
ええ!! どうしてぇ?
なんでぇ、校庭に立っているはずなのに……。
図書室をのぞいてみました。
たしかにうわさどおり、二宮金次郎のような石像が本をよんでいました。
図書室をのぞいてみました。
二宮金次郎の石像が本をよんでいました。
これが最終バージョンです。
噂はうわさを呼び、いつか〈ような〉ということばが消えています。
そのころになってもうひとつ風評がひろがりました。
「本をよまない子は、石になるぞ」
なんだか……あやしい。
これは先生が風評にわるのりして、広げたようです。
「あれ、本田君だ。あの本よんでいるの、まちがいない本田君だよ」
「そうよ。本田君よ」
図書室の怪談を、実体験しょうとこわごわのぞいた。
男女の生徒。
見てしまいました。
同じクラスの本田君。
もっとも図書室にふさわしくない少年。
いじめっ子。
ひとにらみされただけで。
石にされてしまうような。
鋭い眼差し。
ド迫力。
すごみのある顔のもちぬし。
ふたりはこっそりとあとずさりしました。
教室にもどる。
明るいふんいきだ。
本田君がいないからだ――。
ふたりは、いま見てきたことはだれにも話しませんでした。
だってそれっきり、本田君の姿は教室から消えてしまったからです。
でもふたりとも知らなかったことがあります。
ほかの学校でも、いじめっ子に同じことが起こっていました。
石にされた男のこたちがはこばれていく場所は――?
市立図書館の地下室。
未公開図書保管室。
そこにはたくさんの石の少年像が保管されています。
勉強ぎらいの子。
ともだちをいじめる子。
ワルイコ。
吸血鬼ににらまれて石にされてしまったのです。
これは本当の話です。
メデゥサのような吸血鬼がいるんだぞ!!
えっ、メデゥサを知らない。
ゴルゴンのひとりであるメデゥサ。
髪が蛇だったかな。
ひとにらみされると、石にかえられちゃうんだよ。
たしかゲームにもなっていたよね。
えっ、あまり怖くない。
じゃ、これでどうだ。
この石像は吸血鬼のための食糧になるのだ。
ここはかれらの食糧保管庫でもある。
呪いからとかれた少年たちをまっている運命は。
そのときこそ、確実に死ぬことなんだよ。
そんなことも知らない。
石にされた悪ガキは。
動かずに。
動けないのだが。
血を吸われる。
時を。
待っているんだよ。
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