第2話

佐伯にあの日のことを聞いても、知らないの一点張り。

佐伯はずっとサッカー部の人達といたらしい。

じゃあ、マジで誰あの佐伯モドキは。


「気になる……。」

「気にしすぎだよ~ゆうちゃんは~。」


呑気にそういう友人まなこと、青木まなみはお菓子を食べながらのんきに答える。

人がこんなに悩んでいるというのにのんきなやつめ……。

まぁ、まなはいつもこんな感じか。ぽややんちゃん。私とは正反対。

まぁそんなおややんちゃんはおいといていい。

今問題なのは、佐伯モドキ。

何回か昼休みに音楽室や放送室を覗くが、今のところ佐伯モドキも歌姫も見かけない。

声は聞こえるのに。


「ちっ……、どこに入んのよ歌姫……。」

『ゆうちゃ~~ん。佐伯くんは教室にいるよぉ~』

「……わかった、ありがとう。」


まなと電話しながら声のする方に歩いて行くが、佐伯は教室に居る。

つまり、やっぱりあれは佐伯じゃない。

佐伯モドキ。……長いからモドキでいいや。

佐伯は今、教室に居る。まなの見間違いでなければ。まなが買収されてなければ。


あの子ちょろいからなぁ……。おやつで釣れるからなあ……。ちょっと心配。


まあそれは置いといて。

つまり、モドキの正体は、佐伯の姿を模したなにかってこと。

……おい。

何もわかってないじゃん。

佐伯ソックリのなんなのさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!



―一週間後―


んんーー、姿見えない。

声は聞こえるのに、姿は見えない。

歌ってはいるんだろうけど……。

くそっ!姿表せよっ!!!!


だが、わかったことがある。


1,昼休みにしか声は聞こえない(元からわかっていた)

2,音楽室のみにしかあらわれない new

3,昔合唱部があった  new

4,実は男……かも? new


……いや新事実多すぎな????

2番目はいい。

3,4なんだこれ。



『いやぁ、もういつだったか忘れたけどなぁ。昔合唱部があったんだよ。男声合唱部。珍しいだろ。わしの兄さんがその部員だったんだけどな、とある事故で部員が一人なくなり、それ以来男声合唱部は潰れてしまったんだよ。』


そう語ってくれた用務員のおじさん。

最近来たおじさんで、やっと話を聞けた。定年退職したおじいちゃんで、おばあちゃんよりは年下みたい。

で、用務員さんの頃にはすでに姿なき歌姫の噂はあった。

お兄さんの頃には、姿なき歌姫は、その男性合唱部の誰かが歌ってるんじゃないか、と。


なるほどねぇ。

じゃぁ、歌姫って名前はふさわしくないんじゃ。

まぁなんでもいいか。

じゃぁ、歌姫は、幽霊……????


「なぁ、神木」

「なに佐伯。……本物?」

「は?何言ってんだお前。本物も偽物もねえだろ。」


本物の佐伯でした。

モドキじゃなかったわ。


「んで、なに?本物の佐伯」

「本物って……。まぁいいや。最近歌姫出てんの?」

「出てないよ。声しか聞こえない。」


佐伯は ツッコミを 諦めた。

佐伯とはこの前話聞いてくれてあたりから、よく歌姫の話をするようになった。

情報は持ってないし、私に聞くだけだけど。


「あ、そうそう。俺の爺さんの……じいさんだったかな。ここに通ってたって聞いたことあるわ。」


お?これは、有力情報……?


「その頃から歌姫の噂は?!」

「それが、分かんねえんだよなぁ。通ってたってことしか分かんねえんだわ。」


……。

やっぱり佐伯はあてにならないか……。

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