北方の地で
第22話:北方の地
北方都市ノル。
北部の大山脈と王都との間に位置するこの地方都市に、アリサの
「でっかい山だなぁ」
北に数千メートル級の山々が
「ところで兄貴、王女様たちはどこに行ったんだ?」
「
「兄貴たちは、参加しないのか?」
「俺が口を出す事じゃないからな」
軍議は、指揮官で王族のアリサに、支配階級である騎士が中心に行われるそうだ。そのため、アリサにずっと付き添っているシャルですら、軍議には参加できないらしい。
そんな場所に、どこの馬の骨ともわからない自分が参加できるわけもなく、また、参加する気もなかった。
「シン。こんなところにいたの?」
「げえっ、シャル!?」
現れたシャルを見て、青ざめた顔をするシン。
「弓の練習。終わってない」
「か、勘弁してくれぇ」
逃げようとするシンだが、すぐにシャルに捕まってしまい、引きずられるように行ってしまった。
シンたちを見送っていると、何かが足に
「……お前、よくそんなもん連れてるよな」
シンたちと入れ替わるように、ヒルが近寄ってくる。彼から見れば、
「まぁ、今となっちゃどうでもいい。それより、行くんだろ? ギルド」
「はい、お願いします」
「……そいつは置いていけ、討伐されちまうかもしれないぞ」
ウルを部屋に戻し、ヒルと共にノルの冒険者ギルドへと向かう。
※※※※※※※※※※
「そう言えば、
「あぁ? そんなことも知らないで、お姫様に付いてきたのか、お前?」
「大きさは人の子供と同じくらいか、少し大きい。気性が荒く、知能は高いが本能での行動を優先する。人の里に出れば、
「知能が高い?」
「武器を使ったり、ある程度の社会を形成してるってことだ」
「社会性があるってことは、リーダーがいるってことですか?」
ならば、方針が変わってくる。リーダー個体の撃破に重点を置くならば、あるいはと。
「残念だが、そんな簡単じゃないぞ。小鬼は集団が大きくなると、その行動が変化するんだ。より本能に
「……どうやって止めるんですか?」
「欲望を満たすまで放っておくか、もしくは群れを小さくするしかない」
「つまり被害を少なくするには、
兵力差が劣勢な上に、敵を
「前回のときは、一万以上の兵を投入したって話だが……。なぁ、いよいよヤバくなったら……」
「はい。俺たちを捨てて逃げてください」
迷わず答えた自分に、目を見開くヒル。
「
「お前は、いいのか?」
「決めたことなので」
それを聞いて、ハァとため息をつき、ばつが悪そうに頭を
「……前もこんなことがあったな。なに、心配しちゃいねぇよ。俺は、お前の目を信じてんだ」
そんな会話をしていると、目的の冒険者ギルドに到着した。
※※※※※※※※※※
ギルドに入ると、中は
依頼を貼り出している掲示板を見てみると、小鬼退治の依頼が複数あるのに加えて、剣のマークの入った依頼も確認することが出来た。
剣のマークが入った依頼は、報酬が
「まぁ、想像していたことではあるな……。それに、実力の無い奴らは、とっくに逃げ出しちまってる頃だしな」
ギルドの奥へと入り、受付へと向かう。
「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか。依頼を受ける場合は、掲示板から用紙を」
「いや、今のここの情報が欲しいんですけど」
「はぁ、情報ですか?」
「……ここ最近で、なにか変わったこととか、ありました?」
「……そうですねぇ、知っての通り
やっぱり、手を回されていた。ここまでは、想定通りのこと。
「あと、最近では
「
「この地方の魔物です。普段はもっと山脈寄りに
一通り話しを聞いてみたが、他に
そうして、自分たちがお礼を行って帰ろうとした時、はっと思い出したように一枚の依頼用紙を出してくれた。
「これ、正式な
見れば殴り書きのような汚い字で、
「……妹を助けて下さい?」
「ええ、イタズラにしてはちょっと
そんな奇妙な依頼には、待ち合わせ場所と思われる場所が書かれていた。
「……どうすんだ?」
聞いてきたヒルは、「
「……行ってみましょう」
時間を無駄にすることは出来ないが、どうしても依頼の内容が気になってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます