第20話:依頼
シンに案内されて、王都の冒険者ギルドに到着した。建物からはひっきりなしに人が出入りしていて、とても忙しそうな様子だった。
「王様の出陣が近いから、街道の整備や警護なんかで、いっぱい
様子を見に行ったシンが、近くの冒険者から事情を聞いてきてくれていた。
無理もないと思いながらも、どこか違和感を覚える。
「……そうか、冒険者への依頼は誰でも出来るのか?」
「さぁ、やったことないからなぁ。受付で聞いてみれば良いじゃないか?」
シンに
意外に広い建物の中も、冒険者たちで
「あの……」
「どういったご用件でしょうか?」
こちらが話しかけようとすると、受付の女性は
あまりの忙しさに、いちいち相手にしていられないと言った感じだ。
「ああ、
「申し訳ございません。現在、依頼の方が大変混み合っておりまして」
そんなやり取りをしている最中も、受付の後ろではクエストの書いた貼り紙が、次々とボードへ貼り出されていく。
「あの、普段もこんなに忙しいんですか?」
「いいえ。私が所属してから、こんなことは初めてです。職員も増員しているのですが、なかなか……」
ギルドの処理能力を超える仕事量に、受付の職員も手一杯といった感じなのだろう。そんな、やり取りをしていると、後ろから怒鳴り声が聞こえる。
「おい! 依頼を受けないなら、そこをどけ!」
後ろには、クエストの紙を持った冒険者が列を作っていた。
自分は冒険者に順番を譲り、クエストの張り出された掲示板を眺めてみることにした。
物資の調達、輸送、そして街道沿いの魔物討伐など、様々な種類の
ただ、それらの依頼のどれもに
「あのマークは……」
「ああ、
「第一王子の?」
確かに張り出された依頼のどれもが、ゴンド派兵に関するもののように見える。……いや、
「……やられた」
「兄貴? 何かされたのか?」
「先手を打たれた」
「先手?」
そう。
それを頼る
冒険者は、
辺境で村を出たとき、その技術を見て素直にすごいと思った。
「だったら、王都以外で探せば」
「王都に冒険者が集まってきているんだろ? それに、もう手が回ってるはず……」
「じゃぁ、どうすんだよ?」
「……ヒサヤか?」
シンと二人で悩んでいると、後ろから声を掛けられた。
名前を呼ばれた方を見ると、そこには
「兄貴の知り合いか?」
「……ああ、お久しぶりです。ヒルさん」
それは、辺境の村で一緒に戦った元冒険者。
「あぁ、あん時は悪かったな。置いてっちまうような真似して……」
「いいえ。ヒルさん、ここで何を?」
「あの後、村を襲った連中のことを調べまわるのに冒険者稼業に戻ったんだ。今は
ヒルは後ろの行列を指しながら、迷惑そうな顔で答えた。
「お前は? どうして、ギルドなんかに」
「実は、依頼をしたくて……」
「お前、王女様とこにいるんだろ? ってことは、北方のゴブリン討伐か……」
「ええ……」
「悪いことは言わねぇ。あそこは止めておけ。聞いた話じゃ、相当不味い状況らしいじゃねぇか」
「助けなきゃいけない人がいるんです。……今度は、絶対に」
「……報酬は?」
「え?」
「報酬はどのくらいだと聞いてるんだ。依頼するんだろ?」
そんな男に、自分はポケットから小さい袋を取り出した。
「ふん、良いもん持ってんじゃねえか……」
これは、辺境の村を出る時にポケットにねじ込まれていたのに気付いたもの。
辺境で退治した魔物の魔石。
「
「何を言ってやがるんだか」
ヒルは苦笑いしながら、こちらの差し出した袋を受け取る。
「ただ、問題がある」
「足りませんか?」
「違う、逆だ。
「はい。是非」
「交渉成立だ」
そう言って差し出された手を握り、ガッチリ握手をした。
そして、準備があると言って別れたヒルを見送ると、自分は宮殿へと向かうことにした。
もう一人、決着をつけなければならない人が、そこにいる。
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「
「はい、王よ。出陣の用意、すべて
王に
「テミッドよ。そちからの報告、
「……はい、王よ。北の地での異変は、確認されておりません」
「そうか。アリサを危険な目に
王は、
今は何も言わないことが、せめてもの救いだろう。
王との
「……王子様も、お人が悪い」
「……黙れ、お前が描いた
「こちらの準備も整っております。いつでもお声がけを」
「……分かった」
そう言うと、いつの間にか後ろの人物はどこかへ消えていた。
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