第4話:魔物
村での生活にもすっかり慣れつつあったのだが、少し苦手なことがある。
「今日は、こいつにしとくか」
そう言った村人が、一羽の
普段、スーパーなどで売られている鶏肉しか見ることのなかった自分にとって、それは
自分も何度か手伝ったのだが、初めのうちは鳥を満足に気絶させることも出来なかった。現代の日本、それも一般の学生として過ごしてきた自分には、
今も極力見ないようにする姿に、
「なんだ、こんなんでビビってたら、魔物と出くわしたら、いくつ命があっても足りないぞ!」
「あぁ、分かってはいるんだけど……」
その男は、数年前から村で生活している元冒険者だった。かなりの実力だったらしいが、片目を失って以来、この村で生活している。
そんな会話をしていると、少し離れたところから、自分を探す声がした。
「ヒサヤー、どーこー?」
男は、フッと
「
そう言われ、自分の腰に下げた剣に目線を向ける。
数ヶ月前の一件以来、剣の練習をしていた自分に、村で使い手がいないものを譲り受けたものだった。
今も、ずっしりとした重みには慣れない。
「あぁ! いた!」
探していた声の主は、ついに目標を見つけて、こちらに駆け寄ってくる。
「何にしても、明日は頼むぞ!」
そう言うと、男は自分の肩をポンポンと
それと同時に、駆け寄ってきた少女が声をかけてくる。
「あ、こんにちは!」
「やぁ、ステラ。今日も元気だな。さっき
「うん! いつもありがとー!」
そう言って、村人と挨拶を交わしたステラが飛び付いてくる。
「ねぇ、なんの話してたの?」
「いや、たいしたことじゃないよ。明日は頑張ろうって話」
答えると、飛び付いてきたステラの力がキュッと強くなった。
「絶対、
本当に心配そうに、
「ああ、頑張ってくるよ」
ステラの頭を撫でながら答えると、一緒に帰路についた。
※※※※※※※※※※
翌朝、村の入り口には、男たちが集まっていた。
皆、
自分も装備を確認する。防具も、村の余り物を
そんな中、集まった人たちに村長のダンが呼び掛ける。
「よーし、皆。これから森林に向かうぞ。くれぐれも用心しとくれ。決して無理はせんようにな!」
村の囲いには、丈夫な木材が必要になる。村の周囲に自生している木々では強度が足りず、魔物たちにすぐ破られてしまうのだと言う。そこで定期的に、人手を集めて木材を調達に向かう。
男手が必要ということで、その仕事に自分も付いていくことになったのだった。
「全員、お互いをフォローできる距離を保って進むんじゃ。では、出発‼」
村長の
森林へと向かう道はろくに整備もされておらず、
「草むらからの
先頭の男が皆に注意を促す。元冒険者
のアドバイスに、男たちも気を引き締める。
自分も剣の
「肩に力が入りすぎとるぞ。それでは、
優しく叩かれた肩からフッと力が抜けると同時に
「すみません。こんな
汗を手で
「そんなことはない。周りの連中も少なからず
ダンが話を
それは大きなスーツケースくらいのウサギのような生き物。しかし、ウサギのような
「
ダンが叫ぶと同時に、数匹の
「ヒサヤ! 剣を抜いて目の前のヤツを
自分が剣を抜いて構えた次の瞬間、スドンと大きな音と共に脇を大きな塊が通り抜けていった。風圧と、ほんの数センチ横を通過した質量に
「ヒサヤ! 後ろだ! まだ次がくるぞ!」
ダンが叫び、ヒサヤが振り返ろうとしたとき、
ドンと大きな音が、ヒサヤの目の前で聞こえた次の瞬間、
目線を移した先には、肩から片腕を失った男が、地べたをのたうちまわっていた。
「なにを
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