第18話:自分にできること
一人残され、いつまでも
命を掛ける覚悟を問われて、自分は答えることが出来なかった。
あの一件から、人と距離を置くことにした。
大切な人たちが、目の前で失われてしまうのが辛いから。
逃げているのは、自分でも分かっている。
しかし、人はあまりにも簡単に居なくなってしまう。
※※※※※※※※※※
やがて、視界に
中庭にあったベンチに腰掛け、何度目かの深いため息をついた後、心労からかウトウトと目をつぶってしまう。
そこには、一人の少女が立っていた。
「ステラ、どうして……」
「ヒサヤ、迷ってるの?」
こちらの質問を無視して、目の前の少女は問う。そう、これは夢だ……。
「……あぁ。たとえ俺が命を掛けて、何が出来る?」
剣の腕が良いわけでもなく、魔法が使えるわけでもない。
「ヒサヤは、あのお姉ちゃんが嫌いなの?」
「……お
嫌いなはず、ないだろ……」
「なら、きっと大丈夫」
そう、言って少女は光の中に消えていく。
「……ここで、何をしているの?」
しばらく姿を見ていなかったエルフが、目の前に立っていた。
※※※※※※※※※※
「シャルこそ、アリサに付いていなくて良いのか?」
いつも、彼女はアリサの
だが、
「王都は自然が少なすぎる。私には息苦しいの。アリサはどうしたの?」
「……俺は、もう必要ないんだそうだ」
「そう、無理してるのね。お互い」
意外にも自分をも
「お、俺は、別に」
「あの子には、あなたが必要」
シャルは迷いなく断言した。
「それに、あなたも後悔しているのでしょう?」
「……」
「あの子は、人に甘えるのが下手。そして、あなたも、人と関わるのを恐れている」
図星を突かれ、返す言葉が見つからない。
「……意外だな。俺が嫌いなんじゃないのか?」
「警戒していただけ。あなた、別の
「知ってたのか!?」
自分が異世界から来たことを指摘されて、思わず大きな声を出してしまう。しかし、彼女は小さく首を横に振った。
「知らない。でも、
それは、かつての彼女のことだろうか。人の地で一人生きる
「いい、あの子には、あなたが必要」
再び、アリサに自分が必要だと言うシャル。
「どうして、そう断言出来るんだ。彼女の周りにだって、頼れる人がたくさん居るだろ?」
「以前ならそうかもしれない。でも、今は状況が違う」
何かの変化があったのか、思い当たることが一つあった。
「……聖霊か。考え過ぎだろ? アリサの周りをウロチョロしてるだけだぞ?」
「周囲はそう思わない。聖霊は、この国では姿の見える神。それに平気なのはあなただけ。……見て」
彼女が
「エルフには少し
野営地の林で出会ったときのアリサの驚きようが、理解できた気がする。
「アリサはとても強い子。でも同時に、とても
「そんな、それが俺だって……」
「あなたは、なぜ
夢を見た。とても嫌な夢だった。
その中で、少女がいつも泣いていた。
何も出来ない自分が腹立たしくはなかったか。
少女を支えてやりたいと、願ったのではなかったか。
無気力だった自分の手に、再び力が
「アリサは光を進む子。なら、誰かが影を請け負って支えてあげなければ」
小さい声で「頑張って」と言うと、シャルは中庭から去って行った。
また一人残されてしまったが、今度は心持ちが違う。再び固く握った拳とともに、自分の心は固まった。
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