『アイノカタチ 』大好きな人と幸せだった。けれど側にいられなくなった、どこへ行こうか。
設樂理沙
第1話 ◇大学3回生 【9時と18時】 2回投稿
◇大学3回生
大学1年の時に同じ授業を取っていた街木くんと3年になって
また同じ授業を取れて折角親しくなれたのに……街木くんと離れ離れになる夏休みに、休みになったうれしさだけではない微妙な心持ちになった。
そんな風に少し寂しさみたいなものを感じていた私に、夏休み
街木くんから4回LINEが来て、4回の食事とカラオケで歌いまくって
楽しい時間を過ごした。
私は街木くんからの1回目の誘いを受けた時、どんなに自分が
彼からの連絡を待ちわびていたのかを、改めて思い知らされた。
――― そうこうしているうちに夏休みも終わり、休み明けの初めての
授業で山本芽衣と街木歩がその日、大学の食堂で一緒にLunchを
摂っていたときのこと ―――
芽衣と久しぶりに学食で飯を食ってると、向こうから気の強い女が
こちらに視線を向けたまま、もう食事は済んだのか手ぶらでやってきた。
とまれ!
『何も言うな! 黙って歩いて行けっ!』
俺は心の中で念じた。
果たして……。
チっ、ヤツは声を掛けてきた。
この俺を一蹴して振った村野真理子が、あからさまに何か言いたげな風で
俺の側までやって来ると底意地の悪さを貼り付けた顔で嫌味を炸裂してきた。
「久しぶりぃ~、街木く~んっ。
あれから全然音沙汰がないと思ったら、へぇ~可愛い子連れてるじゃん。
思ったより街木くんって移り気なんだぁ。
真理子がっかりぃ~。
実はさ、あんなに私にご執心だったから夏休み中に少なくても1度や2度くらいは
連絡が来るかなって思ってたのにぃ~。
薄情過ぎない?
連絡が来ないっていう可能性があるって分かってたら、
来るかな来るかな、なんてヤキモキすることもなかったのに、
なんだかすっごく損した気分だわ。
まっ、せいぜいその彼女に逃げられないようにね。
……じゃなかった、あんたの場合気が多いんだからすぐに新しい女に
手を出さないようにね、が正解よね 」
よけいなことを大きな声で周りに聞こえよがしに言うだけ言うと
真理子は連れていた自分の友達と俺たちの前から立ち去った。
酷い女だな、全く。あの言いようはなんなのだ。
どんだけ俺がストーカーまがいの男だったかというふうに
確信犯的にスピーチしていきやがった。
見た目の華やかな美貌にノックアウトされて告白などした過去の
自分をぶん殴ってやりたいぜ、全く。
俺は芽衣と付き合い出してから、真理子のことなど一度も思い出した
ことはない。
それなのにさっきの真理子のあの言い草。
ンとにあきれるやら腹が立つやらでイラっときた。
告白されたからって振った相手が自分のことをいつまでも
想ってくれているなんて、どうしたらそんな風に思っていられるのやらだ。
ほんとに……バァ~カヤロウー だっ。
衆人環視のなか、自分からそういう風に思ってたことを告白した
ようなもんだろ? さっきの台詞を聞く限り。
恥ずかしいヤツだなぁ。
そういうの、ちっとも自分じゃあ気付いてないんだろうけど、
痛いヤツだ。
人生は短いんだ。
振られた相手のことばかり考えてられますかって。
それに何より好きだと思ってた彼女よりずっと気になる存在が
できたんだ。
『1mmも思い出しすらしなかったから安心してくれ!』
俺は去りゆく真理子の背中にそう言葉を投げつけた。
俺の目の前にいる芽衣は、俺と真理子の遣り取りをよそに
俺が芽衣の方を見た時には、食事に集中していた。
有難い。
こういうところも彼女の美点だ。
よろしくない好奇心は持たずにいてくれる。
だから俺も言い訳することなく、食事に戻った。
だけど、食事が終わり連れだって学食を後にし、
それぞれの講義に向かう時になって別れ際、芽衣が言った。
「
「……そうかなぁ」
「そうだよ」
芽衣のほうがよっぽど奇麗だよって言いたかったけど、
正式に交際しているわけでもないのに、それは不味い気がして口にしなかった。
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