8-2 裸でも見せてやろうか

 いっそ充希が部屋に来るタイミングを計って、2人が裸で寝ている姿を見せつけてやろうか。ショック療法ってやつだ。いやいや、ヘンストリッジさんの裸を見たせいで、なんていうイケない妄想を。充希に襲われる前に、親父に殺されるかも。

 でも、ダメ元で瑞希さんに「ホント、フリだけだから。お願い。ホントにするわけじゃないから。フリだけでいいんで協力して」って頼んでみようかな。天然だからうっかりOKしてくれたらラッキー。おれって最低?

「何を考えてるんですか」

瑞希さんとのデートの帰りだった。

「いやね、あいつの横暴な振る舞いをやめさせるために何とか思い知らせる方法はないかと」

「お兄さんには無理。充希ちゃんを本気で悲しませることなんて。だから、わたしは・・・」

「瑞希さんはあいつのことどう思う」

つきあってるのに、どうしていつまでも瑞希「さん」かというと、呼び捨てにすると義妹にキスしている気分になって萎えるから。まあ、瑞希さんも義妹だけどさ。

「こうなるんじゃないかと思ってました」

「そんな、また、前世からの逃れられない定めみたいに。変えられない運命なんてないから」


 また、充希に捕まった。

「ねえ、あたしの買い物にもつきあってよ」

「やだよ、あんな面倒なこと」

「お姉ちゃんとは行ったじゃない。楽しそうに」

「見ていたようなことを言うな」

あれは買い物じゃない。デートだ。ほとんど買い物のお供をしていてもだ。

「あたしと行くのはつまらないって言うの」

「そりゃあ」

退屈な買い物でも彼女といれば楽しいよ。だって、第1に、キスができるだろう、第2に、キスができるだろう、第3に、キスができるだろう、・・・。

 おれは、ほんの2、3カ月前まで、「なんてバカな奴ら」と見下していたようなたぐいの人種と同類になってしまったようだ。


「あたしだっていろいろしてあげられるよ」

まさか、充希もおれの心が読めるのか。まあ、おれができるんだから、その逆もあるよな。血もつながってないのに一卵性双生児みたいじゃないか(注:一卵性双生児がテレパシーでつながっているというのは都市伝説です)。

 ダメ元でネットのコーナーに「せっかく初めて彼女ができたのに、幼い頃から知っている女子にからまれて大変・・・」みたいな感じで相談すると。そりゃあ、もう予想通り。「自慢乙」「リア銃殺せ」みたいな口撃が炎々と。

まじめなアドバイスはひとつだけ。

「その女のしていることはストーカーです。警察に相談して100メートル以内に近づかないよう禁止令を取るべきです」。

なんかDV夫対策の法律とごっちゃになってる気がする。その女子はおれと同じ親の扶養家族で一緒に住んでるとは書かなかったけど。接近禁止令は無理。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る