アンドリュー博士の妄執
渡馬桜丸
登場人物・舞台設定・梗概
【登場人物】
・キティー・ブロウ…マルドゥック市警殺人課の刑事。
・バーク・ウォッチ…ブロウの相棒。いまは亡きフライト・マクダネルに憧れている。
・アンドリュー・L…楽園の研究者。“
・助手…楽園において唯一アンドリューを慕い、付き従う人物。
【舞台設定】
『マルドゥック・ヴェロシティ』冒頭時の楽園および、『マルドゥック・スクランブル』本編開始の少し前におけるマルドゥック市。
ふたつの時系列をアンドリューとブロウ、それぞれの視点で交互に描く。
【梗概】
[アンドリュー(一)]
アンドリュー博士は助手の命がけの奮戦により、楽園を襲った部隊の攻勢から九死に一生を得る。しかし助手に持たせていた自らの研究成果、所持者の身体能力を飛躍的に高める黒いナイフが紛失していた。
[ブロウ(一)]
相棒バークの失態により、連帯責任で減俸を命じられたブロウ刑事。無差別殺人犯〈黒鉈〉の目撃証言を集める中、四博士のひとりを名乗る男から電話がかかる。名前を二度訊ねるも、はぐらかされるばかり。脅しを交えた、〈黒鉈〉の情報提供。ブロウは相手の真意を推し量る。
[アンドリュー(二)]
アンドリューは三博士によって、被験者たちへ新たな道を提示する機会さえ与えられなかったことに憤る。己の存在や貢献への否定。底知れぬ怒り。しかし瀕死の助手から提案を受け、三博士たちより先の領域へ踏み込むことを確信する。
[ブロウ(二)]
情報をもとに、〈黒鉈〉の棲家へ単独で乗り込んだブロウ。もぬけの殻。再び情報提供者からの電話。状況の説明。痕跡から辿るよう横柄に指示を出される。従わざるを得ない。相手は過去、自分が交際していた男に騙され、マフィアに機密を漏らしてしまったことを知っている。その後、仲間が壊滅的な打撃を受けたことも。
やがて〈黒鉈〉に行き着く。元軍人、痩せこけた男。電話の男曰く、本来ならば手にしたナイフの作用により殺傷本能を刺激され、超人に近い動きを見せるという。しかし衰弱した身体を見て、油断してしまう。すんでのところでバークが駆けつけ、ナイフを持った腕ごと〈黒鉈〉の胴体を撃ち抜く。立ち上がり、身を寄せるブロウ。ナイフを拾おうとするバークに銃を向けて告げる。
「これを訊くのは三度目になる。お前は誰だ」
[アンドリュー(三)]
助手が提案したのは、自らの肉体に施行する“
アンドリューは自らの凡庸を突きつけられたかのように錯覚する。そして怒りを、その身を差し出した助手へと向ける。罵詈雑言。存在の否定。助手はゆるやかに、彼の首へと手を伸ばした。
[ブロウ(三)]
バークから香るはずのタバコの臭いがしなかったため。さらには同僚のクレアから、過去存在した姿を変える能力者の話を聞いていたため、ブロウはその正体を見抜いた。激しく苦悶しながら、バークだった者が本来の美しい女性へと戻る。かつて三博士に憧れ嫉妬した愚かな男の、忠実な従者。助手であった彼女は自ら手にかけた博士をそれでも愛しており、自身こそが彼の最高傑作であると語る。長く探していた黒いナイフが犯行に使われていることを知り、穏便に回収するためブロウを隠れ蓑にしたとも。博士の妄執が生んだ、博士への妄執。ブロウの選択は――。
[アンドリュー(四)]
最期のとき、アンドリューの意識は目の前の助手ではなく、三博士へと向いていた。
振り向いてくれなかったサラノイ。愛しい彼女を一度は釘づけにした、忌々しいクリストファー。そして己を認めてくれなかった兄、チャールズ・ルートヴィヒ。アンドリュー・ルートヴィヒは泣きながらその生涯を終えた。
[ブロウ(四)]
謹慎を終えたバークが、噂の真偽を確かめに走り寄ってくる。ブロウは肯定。近々退職する予定。憧れや嫉妬に絡めとられて、自分の正義がわからなくなったから。もっと自由な場で、やりたいことをめざすと宣言する。バークには言えなかったが、助手を確保しなかった自分に刑事の資格はないとも思っていた。
コネクションを利用して、探偵でもやる予定。寂しげに、クビになったら雇ってくれと言うバークに対し、軌道に乗ったらと朗らかに答える。
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