戦慄!殺人鬼板前の源さん

回転饅頭

はじまり

 花火大会の夜。空は大輪の花のような花火が炸裂音とともに花を咲かせ、萎れて落ちる花弁のように夜空に姿を消していく。

 田川十八たがわかずやの隣で、石段にちんまりと座る恋人の沖朝香おきあさかの左手に、そっと手を重ねようと右手をゆっくりと動かす。

 それにしても、なんて可愛いんだろう。その名前に似た花。朝顔の花をあしらった模様の浴衣が素晴らしく似合っている。


「ねぇ」

「なあに?」


 朝香が十八の声がするほうに顔を向けた。上でまとめた髪からのぞく後れ毛もたまらなく色っぽい。


「キスしてもいいかな?」


 わざわざ何故訊くんだろう。可愛いなと朝香は思った。小さく頷くと、朝香はうすく瞳を閉じて十八の顔が近付くのを待った。

 また一発、夜空に花火が上がった。かなり大きな尺玉のようだ。閉じた瞳から瞼ごしにわかるくらいに明るく光った。


 そのすぐ後、十八の甲高い悲鳴が聞こえた。



 

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