第5話
――西暦2035年7月第3週 土曜日 深夜1時半過ぎ――
【忘れられた英雄の墓場・25階層】におけるボス・
1戦目はお供を全て倒したところで、
続く2戦目では、お供を3体残したまま、
さらに3戦目では、お供を1体残した状態で
「むむむーーー。3戦目はあと少しってところまで来たのに……。なんで、デンカは死んでしまったのかしら?」
「悪い……。少しばかり、従者:ダイコンの設定を従者:ヤツハシを厚く守る方向に傾けすぎちまった……。敵の数が減ったら、通常通りの動きに戻るように設定しておかなきゃならんな」
「言い訳はよしこさんって言葉を知らないのかしら? まあ、良いわ……。デンカ。あなたの従者:ダイコンの設定には期待させてもらうからね? もちろん、デンカの回復にもよ?」
マツリの誉め言葉はデンカの分をとってつけたかのような言葉であるが、それでも、デンカ(
「よっし、5分ほど待ってくれ。ぱぱっと従者:ダイコンの設定を済ませちまうかさら?」
「5分と言わずに、10分くらい時間をかけて良いわよ? 焦って、従者の設定をいじっちゃうと、失敗しちゃうものだし。あたしは少し離席して、冷蔵庫から飲み物を取ってくるわ」
マツリ(
その後、
「うーーーん。スノウサイン・コーヒーか、ドラゴン・ティ、どちらにしようかしら? あまり、この時間にコーヒーもお茶も、飲まない方が良いのだけれど……」
「決めた。インスタントコーヒーで済ませようかな。ポットにお湯は残ってたかしら?」
そして、ポットからそのマグカップにお湯を注ぎ、さらにはノンカロリーシュガーで甘みをつける。そして、一口飲み、うんと言ったあと、マグカップを持って、2階の自分の部屋へと戻っていくのであった。
「デンカ、お待たせ。5分ほど時間をオーバーしたけど、大丈夫だったかしら?」
「ああ、俺の方は大丈夫だぜ? ついでにトイレを済ませてきたから。んで、ちょうど、俺も戻ってきたところだから」
あら、そうなの。それはタイミングが良かったわとマツリ(
そう思うと、マツリ(
「ん? マツリ、眠いのか? でも、25階層までクリアしちまわないと、クリア状況が保存されないから、我慢してくれよ?」
オープンジェット型・ヘルメット式VR機器のスピーカー部分からデンカの声が聞こえ、マツリ(
「年頃の女性のあくびを聞くなんて、犯罪よっ!? そこは聞かなかったふりをしなさいよっ!」
「なんで俺がマツリのあくびを聞いただけで犯罪者呼ばわりされなきゃならんのだ……。だいたい、お前、寝落ちした時なんか、俺、トッシェ、ナリッサがマツリの寝息を聞いてるんだぞ? あくびくらいで犯罪だったら、寝息を聞いてる俺たち3人は性犯罪者になっちまうだろうが……」
デンカの言いにマツリ(
「なんで、あんたがあたしの寝息を聞いているのよっ! いい加減、訴えるわよっ!」
「そんなに怒るなって……。俺だって聞きたくて聞いてるわけじゃないんだからさ? 不可抗力ってやつだぜ……」
「あたしが今度、寝息を立てたたら、あたしのスカイペ音声をミュートにしなさいよっ! 絶対よっ!」
「はいはい、わかりましたよ。それよりも
あくびはうつるとはよく言ったものだ。スカイペ音声通話中、誰かがあくびをすれば、そのあくびが伝染し、誰かがあくびをしてしまう。そして、次々と伝染し、結局、スカイペ通話に参加している全員があくびをしてしまう始末となってしまう。
マツリ(
その状態から、回復薬や回復魔法を使用して、全快させるわけなのだが、今回、ダンジョン【忘れられた英雄の墓場】に挑むことにおいて、無駄に回復薬は使いたくなかった。
ノブレスオブリージュ・オンラインにおいては、戦闘中でなければ、時間経過で体力、SP(スキルパワー)は回復していく。ただし、戦闘中において、SP(スキルパワー)は知力や魅力のステータス値に依存して回復していくものの、体力は回復
魅力や知力のステータスが高いキャラなら、戦闘中以外で自然にSP(スキルパワー)を回復させるよりも、戦闘中のほうがSP(スキルパワー)の回復力は圧倒的に高い。しかし、それは手ごろな雑魚NPCが1体だけでうろついている場合に限る。マツリたちは時間はかかるが事故防止を防ぐためにも自然回復に身を任せていたのであった。
マツリたちが自然回復に任せているのは、単に回復薬代をけちろうというだけでなく、隠し業の充填時間も係わってくるので、わざと回復薬を使っていなかったのであった。
それはともかくとして、
「デンカ? もし、従者:ダイコンの設定を間違えていたら、デンカの恥ずかしいスクリーンショットを
「そりゃあ、大変だ。マツリ、祈っておいてくれよ? 俺が従者:ダイコンの設定をミスってないことをなっ! よっし、今日のノブオンは、この1戦で終わらせるぞっ!」
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