第10話 罰は大事だよね
「いやぁ、ご苦労ご苦労。ここまで手伝ってもらって悪いね。後は俺がやるから、下がって良いよ」
「お、おめぇ……」
地中を掘り進めるのには体力がいるため、【アース・ドラゴン】はとうとう体力が尽きて動かなくなった。
ひたすら追い回された相手リーダーを労ってやると、何故か凄く睨まれてしまう。なんだこいつ褒め甲斐ねぇな。
「そう怒るなよ、最初に突っかかってきたのはお前らだろ?」
「ぐぅ……」
格下に見ていた魔法使いにやられたのが相当堪えたのか、反論は返ってこない。
意外と物分りも良いし、何よりドラゴン退治は殆ど任せっきりだったので俺は温情をかけることにした。
「安心しなって、ちゃんとクエスト報酬は山分けにするから」
「ほ、本当か!?」
俺の言葉を聞いて、相手のリーダーが喜色満面の笑みを浮かべる。ドラゴン討伐は九割方こいつの手柄なので、普通に考えたら当たり前のことなんだけどね?
まぁ、喜んでくれたなら何より。さっきまでは全取りする気だったしな。
「んで配分だけど、報償金の三割はお前で七割は俺。素材は魔法の触媒に必要なので俺の全取り……でどうだ?」
「三割もくれるのか!? ありがとう、ありがとう……!」
取り分をめっちゃ少なく見積もったのに、泣いて喜ぶ相手リーダー。
どうやら、ドラゴンに追いかけ回されたせいで大抵のことはそれよりマシみたいな精神状態のようだ。やったぜ。
「で、報酬ってわけじゃないけどナナも俺達が貰っていくので」
「どうぞどうぞ……って、は……?」
相手のリーダーが、何言ってんだこいつみたいな目で見てくる。
「貰っていくってどういうことだよ!?」
「お前らがあの子をたぶらかして働かしてたんだろ? そりゃあ、そのままってわけにはいかないさ」
「ぐ、ぐぅぅぅ!」
反論すれば【アース・ドラゴン】の餌にされるのは分かっているようで、今度も反論はなかった。代わりにブツブツと呟く。
「くそぅ……逃げられたら困るからわざわざ慎重に接してたのに……。こんなことなら……いや何でもない」
「その先を言わない判断力は認めるけど、マジで反省しろよお前?」
そういうとこだぞホント。
「まぁ俺達も鬼じゃない、無理に離れろとは言わないさ。むしろ積極的に会いに来い」
「ん? そうなのか?」
俺を本当に鬼だとでも思っていたのか、相手リーダーが意外そうな顔で聞き返してくる。
心外だと思いながら、俺は相手リーダーを安心させるため笑顔を浮かべた。
「もちろんだ。お前らにはまだ、俺らとナナが仲良くしてるのを見て悔しがる役目が残ってるだろ? 自分の行いを改めて、血涙流せ」
「やっぱ鬼だお前!!!」
これが彼らに課すつもりの、ナナを誑かしていた罰である。まともなパーティーの関係を羨んで、改心してくれると幸いです。
「要はつっかかってきた件は不問にしてやるしクエスト報酬もやるが、代わりに反省しろよってことだ。力があれば何でも許されると思ってるその性根を、叩き直してやるよ」
言いながら、俺は倒れている【アース・ドラゴン】の頭をミスリル製の魔導書で叩き潰した。討伐成功である。
「性根はどう考えても君の方が悪いよね……」
ナナの相手をしていたリンがこらえきれないという風に突っ込んできたが、今回は割と良いことしたつもりだったので悲しい。
「分かった、もうお前には逆らわねぇよ。俺も命が惜しいからな」
「あぁ、懸命だな相手リーダー」
「相手リーダー!? 俺にもちゃんと名前があるんだけど!?」
「悪い。興味ない奴の名前は覚えられないから、このまま相手リーダーで通していいか?」
「よくねぇよ!?」
この調子で世界中の脳筋を改心させていけば、魔法も日の目を見るだろう。
俺はホクホク顔で、皆と一緒に街へ帰るのだった。
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