雲の向こうの星たちも
ゆお
第1話
「どうしてもわたしは違う高校に通いたいの!」
張りつめた空気の中を、怒りを含んだ女声が突き抜けた。その声には幼さがある。濡羽色の髪が照明を反射して天使の輪を作り上げていた。
「だから、その理由を話してくれと言っているだろう」
テーブルを挟み、なるべく穏やかな口調に聞こえるようボリュームが落とされた男声が後を追う。その隣にいる女性は心配そうに眉尻を下げて、その一部始終を見守っていた。
「言ったって許してくれないくせに」
「あたりまえだ。陽葉、自分が今言った高校のレベルを知らないわけじゃないだろ。あそこは底辺の愚か者がいく――」
「わからず屋!」
男性の声は、少女の叫びで打ち消された。少女の向かいに座る、女性は目を白黒させている。震えた空気に沈黙が通り抜けた。
「わたしのことをわかってくれないお父さんもお母さんも大嫌い!」
少女はそう言い置くと、踵を返した。踏み込む足音は憤りを感じさせる。父親が制止の声をかけるが、時既に遅く、少女は玄関を飛び出していた。重たい扉が閉まる音が聞こえる。
「何を間違えたんだ、私は……」
父親はうなだれて呟いた。母親は、娘が去って行った跡の開かれたままのリビングのドアと、悄然としている夫の姿をただ見つめることしかできなかった。
「お父さんなんか、お母さんなんか大っ嫌い……」
少女はうわずった声を出して星明かりが降り注ぐ夜の道を駆けている。しきりに前に出る足は重たそうで、それは運動が苦手であることを明らかにしていた。
少女の名前は、
陽葉が通う学校は名前を言うだけで一目置かれるほどで、周りから歓心されることも多く、その声に彼女も悪い気など少しもしていなかった。このままエレベーター式に決められた将来を生きていくのだろうと本人ですら思っていたのだが、小学生の頃、ある出会いをしたことで陽葉の心には進路を変更したいという希望が芽生えていた。
家から出て五分ほど走っていると肺に苦しさを覚えたようで、陽葉は足の動きをゆっくりと緩めた。しきりに呼吸をしているのだが、肺の疲労がなかなか収まらない。挙句には膝に手をついて肩で息をした。
陽葉は顔を上げると視界の奥の高台を見据えた。あの高台の奥、灌木とその後ろに繁茂するマテバシイを抜けた所に、陽葉の未来を変化させうる人物との邂逅があった。
陽葉の住む町は県西部に位置している。自然豊かで大きな公園もあり、その公園を囲むように遊歩道が設備されている。土地の人からは中央公園と呼ばれ、休日には近所の子連れの家族が遊んでいたり、お年寄りたちが健康のために遊歩道を歩いている。そんな和やかな雰囲気は町のシンボルでもあり、近所に住む人は勿論隣町からも中央公園に足を運んでくる。しかし陽葉はあまりそちらの公園には行かなかった。
町にはもう一つ小さな公園がある。とは言っても、そこは少し高台になっているうえに遊具など子どもたちが遊べる物はない。あるのは嘘でも風光明媚とは言えない連山や家家の平凡な風景と、人工的に張られた芝生、マテバシイの林だけだった。それでも陽葉にとって一番居心地の良い場所である理由は、近所の人もあまり来ることがないからだ。
高台の公園の一部はマテバシイという常緑樹に囲まれ、秋になれば日本でもよく見慣れたどんぐりをつける。陽葉が小学生の頃は、学校の課外授業で高台の公園に来ることがあり、どんぐりの収集に熱を入れたこともあった。言ってしまえばどんぐりだけしか取り柄のないこの高台の公園も、中央公園に負けず劣らずの知る人ぞ知るシンボル的場所がある。
その課外授業で陽葉が高台の公園に学年全体で来た時のこと。どんぐりの収集に夢中になっていた彼女は、知らず知らずのうちにマテバシイの林をずんずんと奥に進んで行ってしまった。陽葉が気がついた時には周りに人はおらず、見渡せばそこは木々が根付くことを拒んでいるかのように開けた場所になっていた。中央には誰も手入れをしていない木製の廃れたベンチがぽつりと落ちていて、その頃の陽葉にとって、その状況は目に見えない恐怖感を覚えさせるものだった。
中学生になった頃には、逆にその開けた場所の雰囲気を気に入り、両親の目を盗んでは高台の公園によく足を運んだ。日中にそこに行き、日が暮れるまでに帰るのが常になっていたが、ある日、ベンチに座って空を仰ぎ見ていた時のこと、不意な眠気に襲われて陽葉の意識は夢の中に吸い込まれた。
目が覚めた時には既に辺りは真っ暗闇で、周りを囲む木々が風に揺られて不気味に梢を鳴らしていた。昼間とは打って変わった光景に陽葉は声も出ず、ベンチの上で固まったまま動けないでいると、後方の林からガサガサと、風が立てたものではない音を聞いた。おそるおそる顔をひねり、音のするほうを見た途端、そこから何かが飛び出した――。
雑木林を抜けた陽葉は、視界の奥に淡い光にぼんやりと浮かび上がる人の輪郭を見つけた。ベンチの背もたれからは頭だけが出ており、その身体は脱力しているようだ。
陽葉がそちらに近づくと、その足音に気がついたのかベンチに浮かぶ輪郭が緩慢な動きを見せた。その面立ちが淡い光に照らされて、ぼんやりとした瞳が陽葉を見つめた。
「あれ? 陽葉?」
たゆたう葉のような掴みどころのない声音には気怠さも混ざっている。
「こんばんは。――今日も来てたんですね」
「まあね。天気よかったし」
そう言う彼女の手にはスマホが持たれていた。淡い光の正体はこれだったのだと思い、陽葉は目を細める。
視線を落とした彼女の名前は、
高校二年生だと言う茉莉耶は、学生だというのに薄く化粧をしており、耳には小さな宝石のついたスタッドピアス、髪の毛はショートボブでその色はレッドブラウンに染められている。あまりにも大人びた風貌は、今は暗闇のせいではっきりとしていないが、そんな茉莉耶に陽葉は憧れていた。
「あんたが夜ここに来るの珍しいね。……座んなよ」茉莉耶はそう言ってベンチを半分開けた。
陽葉は誘われるがままにベンチに腰かける。茉莉耶の膝元から伸びる光に一瞬目が眩んだ。
「……それで。なんかあったんだろ?」
「え?」突然の茉莉耶の問いかけに、陽葉の身体はビクッとなった。
「え? ――じゃないだろ。話してみなって」
そう言う茉莉耶の視線は未だにスマホに落とされていた。
陽葉はたまに茉莉耶のことを妖怪なのではないかと思う。彼女に図星をさされたのは今回ばかりではなかった。その都度ごまかしてきていた陽葉だったが、腑に落ちない顔をしていた茉莉耶を見ると、効果のなさは火を見るよりも明らかだった。
「急に思い出して。……みやこさんとここで会ったこと」
「なんだよそれ」
陽葉の言葉を聞くと、茉莉耶はフッと小さく笑った。
陽葉が茉莉耶のことを苗字で呼んでいるのは、本人からの希望だった。いわく、茉莉耶という名前が外国の女の子の名前のようで自分には勿体無いから、だと言う。陽葉はまったくそんなことを思わなかったけれど、本人の希望とあれば仕方なし。名前を知ったその日からは、ずっと苗字呼びを心がけていた。
「懐かしく思うことないの?」
「んー、まあ、そういう時もあるかもな」
「ほら。それで、みやこさんこそ今日は何でここに? というか、わたしが来るといつもいるね」
陽葉はそれとなく、自分の話から興味を逸らした。
「いつもではないよ」茉莉耶はそれに気づかず陽葉の話に乗ってくる。
「あたしにだって来れない日はある。今日は星が見たかったから……」
茉莉耶はそう言うと、視線をゆっくりと上げた。それにつられて、陽葉も夜空を仰ぐ。そこには空一杯の星が瞬いていた。
「……綺麗ですね」
「……うん」
交わす言葉の少なさが、その光景の美しさを感じさせた。
この星空を見ていると、陽葉は自分の心が和らぐのを知っている。先ほどまで両親に腹を立てていたその感情が霧散していき、心なしか身体が軽くなるのがわかった。そして、抜けていく感情の隙間を、今度は他のものが埋め始める。
陽葉の視線は上から下へ移り変わった。
「みやこさんは今日星を見に来たんだよね?」
「ああ」
茉莉耶も視線を下げた。その頭上には疑問符が浮かべられているようだった。
陽葉は、ふうん、と鼻を鳴らすと、その視線は茉莉耶の手元のスマホに注がれた。
「ゲーム?」
「え?」
「それ」陽葉はスマホを指差して、
「みやこさん、前にわたしが懐中電灯を持ってここに来た時電気消してって言ってた」
茉莉耶は焦りの色を見せた。
「あれ。そうだっけか」そう言ってスマホの電源を切った。
なんだかおかしい。陽葉は、いつも茉莉耶に向けられる目顔で彼女を見た。
明らかに怪しんだ目で注視する陽葉を、茉莉耶は簡単にあしらった。
「調べものしてたんだよ」
「調べもの?」
陽葉の意識はすぐさま茉莉耶の話題に乗った。
「そう。ガッコでな、バスの問題が出たんだ」
「ばすの?」
言われても陽葉は何のことなのかわからなかった。
「イラストを見てバスの進行方向を答えるやつ」
茉莉耶の手はスマホを操作し始めた。陽葉はまたその光に目を細める。
「これ」そう言って茉莉耶は陽葉の顔にスマホを近づけた。
光の強さに目が痛み、ぱちくりさせて、なんとか画面を見る。
そこには、「バスの進行方向はどっち」という文字と、その下に四角と円で出来た角ばったバスの絵がある。バスを挟むようにしいて外向きの矢印があり、右の矢印の上にはB、左にはA、と書かれてあった。
「ああ。有名だよね、これ」
陽葉はその問題に見覚えがあった。
「有名?」
「うん。答えはBだよ」
すぐさま答えた陽葉に、茉莉耶は驚いた表情を向けた。スマホの光でぼんやりと浮かび上がるその表情が可笑しくて、陽葉は、フフッ、と笑った。
「何でわかった?」茉莉耶は訊いた。
「それはバスのイラストが答えなの。よく見ると入り口がないんだよ」
「は? 入り口がないからなんだよ」
「日本の車道は左側通行だから、人が乗り降りするバスは左側に入り口がないとだめなの」
「うん」
「このイラストを見ると入り口らしいのはない。から、入り口はイラストの裏側にあることになって、答えがBになるの」
陽葉の解説を聞いた茉莉耶は、感嘆の声を漏らした。
「さすが、名門校に通ってるだけはあるな」
褒められて頬に熱を感じた陽葉は、照れ隠しで先ほどから言い淀んでいたことを口にした。
「みやこさん、あの……、言いづらいんだけど……、これね、幼稚園の試験問題だよ」
茉莉耶の目が点になった。手に持っているスマホは今にも零れ落ちそうになっている。
「恥ずかし。あたしは幼児が答えるような問題に頭悩ませてたのか」
その声は後になるほど弱弱しくなっていった。
「あ、でも落ち込むことはないよ。わたしも初めて見た時はわからなかったし、こうして答えられたのもたまたま問題を知ってただけだから」
「年下の子に慰められるのもダサくないか?」
「あっ……。ご、ごめんなさい……」
そう言って俯いた陽葉の姿を見て、茉莉耶は吹き出して笑い始めた。その笑い声が辺りの林に響くと、つられて風が木々の葉を擦り、拍手の雨を作っているようだった。
今でも暗いその場所ではあるけれど、気持ちは明るくなるような気がして、陽葉は隣に座る茉莉耶の姿を見つめた。
いつもは冷たい表情で何でも見透かしているように振舞う茉莉耶だが、ひとたび笑顔を作れば、見ている陽葉は晴れやかな気持ちになる。色んな魅力を持つ茉莉耶と知り合うことができて、陽葉は自分は幸せ者だと感じていた。この時間だけが固まって永遠に続けばいい、ぼんやりと思っていると、茉莉耶の突然の声で現実へと引き戻される。
「謝られるくらいなら、あたしのリベンジを受けてもらおうか」
その提案が唐突過ぎて、陽葉は、「あ、うん」と曖昧な返事しかできなかった。
そんな陽葉を気にすることなく、茉莉耶は先を続けた。
「陽葉の言うように、あたしはよくここにいるけど、さすがに毎日ではないって言っただろ? なんでだと思う?」
「んー、なんだろ。用事とか? あ、気分の問題とかかな?」
陽葉は真面目に答えたつもりだったけれど、答えを聞いた茉莉耶は、またくつりと笑い出した。
「なんで笑うの?」陽葉は少しだけ怒ったように言った。
「ごめんごめん。でも気分って。あたしそんなに気分屋にみえる?」
「とっても」
陽葉が皮肉をたっぷり含んだ声音で言うと、茉莉耶は、今度は豪快に笑ってみせた。
「陽葉は本当に面白いよな。リン以来だよ。あたしのことそう言ってくれるの」
と言い終えても、茉莉耶の笑い声はしばらく収まらなかった。
「え?」
陽葉は咄嗟に訊き返した。茉莉耶の言葉に聞き慣れない単語があったからだ。
もう一度同じ言葉を待っていた陽葉だったけれど、その望みは叶わず、茉莉耶は彼女の問いの意味に気がついているのかいないのか、声色には露ほどの変化もみられなかった。
茉莉耶は右手の人差し指を突き立て、夜空を指して口を開く。
「答えは雨」
「雨?」
「そう。雨の日だけはどうしても星は見えないだろ。雲に隠れちゃってさ」
「そうだけど、それだったら曇りの日も見えないんじゃないの?」
「まあね。でも、雨が降っていなければずっと空を見上げていられるだろ? そしたら見えてくるんだよ」
茉莉耶はそう言って星空に視線を移した。陽葉はそのまま彼女の姿を見つめ続ける。
「雲の向こうには確実に星はある。だから、じいっと見つめるんだよ。たとえ見えなくとも、じいっと。そしたら何か見えてくる気がする」
その声は確実に含みを持っていた。しかし、陽葉にはそれが何なのか、まったくわからなかった。
茉莉耶は再び視線を落とし、陽葉を見た。スマホの光であらわになる彼女の端整な顔立ちを見ると、陽葉は心臓を優しく握られている気がして、かすみ雲に包まれたような苦しさに襲われた。
「だってさ、雲なんかに自分の幸せを邪魔してほしくないだろ」
破顔した茉莉耶の姿は、夜空に浮かぶ星よりもずっと美しく陽葉の目に映る。数瞬、恍惚となっていた陽葉だったが、その光景を瞼の内側に焼きつけようと、ぎゅっと目を瞑った。
「……そうですね」
翌日の空は目が覚めるほどの青と、綿あめのような真っ白な雲がところどころに浮かんでいた。ときどき太陽が雲の陰に隠れ、地上は薄暗くなり、仄かに冷たい風が陽葉の肌を撫でる。
紺色のスクールバックを肩にかけ直した陽葉は、今歩いている通学路の先を見た。視界には陽葉と同じ制服を着た生徒が疎らにおり、その後姿をぼんやりと見つめていると、突然背後から声をかけられた。
「おはよ! 陽葉ちゃん」
ぽん、と肩を軽くたたかれて陽葉は振り向くと、そこには陽葉と同じ制服を着た生徒の姿があり、よ、と小さく右手を上げている。黒色のボブヘアは光の加減で少しだけ茶色く見え、毛先は棘のように伸びていた。快活そうな印象を与えるその女子生徒は、校内で知らぬ人はいないほどの有名人だった。
「あ、黒瀬さん。おはよう」
恭しく挨拶を返した陽葉の目には、少しだけ警戒の色が見えた。
陽葉に黒瀬と呼ばれた女子生徒は、「やだなあ、なんだか赤の他人みたい」と嘲るように言うと、下の名前で呼んでほしいと希望を伝えてきた。
陽葉は遠慮気味に頷くと、すぐさま視線を逸らした。
黒瀬明は情報通として校内では非常に有名な生徒だ。本当か嘘か微妙な噂話も、彼女に伝われば、たちまち学校中に広まってしまう。情報を入手する交友関係の広さにも驚きだが、それ以上に、何でも話してしまう口の軽さも彼女の恐ろしいところだ。
そのため、同学年の女子生徒にはあまりよく思われておらず、陽葉自身もその話を聞いてからはできるだけ明とは距離を置くようにしていた。
「なんかよそよそしいよね、陽葉ちゃん」
「え、そんなことないよ」
「そうかなー」明は納得いかないような声音で言った。
「そういえばさ、知ってる?」
突然話題を変える言葉が出て、陽葉は間が抜けた返事をした。
「あたしの従姉妹がね、二湖高校に知り合いがいるんだけど、その高校の先輩がエンコーってのしてるんだって」
「え?」
「エンコオ。女の子が自分の身体を売ってお金を貰うの。あんまり女の子が口にしちゃいけないんだよ」
明は声をひそめてそう言うが、陽葉が気になったのはそこではなかった。
二湖高校。その高校は、茉莉耶が通っている高校だ。そこの先輩となれば、二年生か三年生ということになる。陽葉は心に強い懸念を抱いた。
「まあ、あたしには関係ないことなんだけどねー」
本当に関心がなくなったのか、明は視線を明後日のほうに移した。その先には大きな白い雲がある。不意に昨日の茉莉耶の言葉が、陽葉の脳内に再生された。
「雲なんかに幸せを邪魔されたくない」。昨晩、陽葉はその意味を考えていた。茉莉耶にとって雲とは何のことなのか。そして、自分にとっては――。
「陽葉ちゃん?」
不意にかかった声で、陽葉の思考は中断した。ぼんやりして歩いていたせいか、陽葉と明の距離は人二人分開いてしまっている。陽葉はそれに気がつくと、小走りで距離を縮めた。
「何か考えごと?」
明は、陽葉が隣に来たことを確認すると、そう訊いた。
「ううん。ただぼおっとしてただけだから」
「そう? それならいいけど。昨日の夜のこと思い出してたのかなって思って」
「え? 昨日?」
陽葉は驚いて訊き返した。昨日は高台の公園で茉莉耶と会っていた。まさか、明か彼女の知り合いがその場面を見ていたのだろうか。陽葉の胸が早鐘を打つ。
「うん。たまたまね、見ちゃったんだ」
「見た……、って何を?」
焦っていることを悟られないように、陽葉はできるだけ落ち着いて声を出す。
「陽葉ちゃんが夜遅くに高台の公園のほうに走って行くの。追って声をかけようかと思ったんだけど、さすがに夜遅かったし急いでる感じもあったから、あたしは帰っちゃったんだけどね」
それを聞いて陽葉は安堵の息をついた。
陽葉の仕草を見て、明は頭に疑問符を浮かべているようだったが、それ以上追及しようとする気はないようだ。
「そうだったんだ……。昨日ね、公園に落としい物しちゃって、それを取りに行ったの」
「だから急いでたんだ」
うん。陽葉はそう返事して、嘘がばれないように明から視線を外した。
昨日の夜、高台の公園で茉莉耶と別れた陽葉は、足取り重く家路についた。自宅に到着すると部屋から灯りが漏れており、両親が自分の帰りを待っていてくれたんだ、と少しだけ悪い気持ちになって玄関の扉を開いた。陽葉の帰宅に気がついた両親は玄関に飛んできて、彼女を責めることなく、そのまま彼女を休ませた。
今日、陽葉が家を出る前も両親は何かを彼女に伝えることはなく、いつも通りの平穏な日常がそこにあった。
このまま問題を先延ばしにしていても解決に繋がるとは陽葉も思っていない。そのために、両親に納得してもらえるような進路を変える理由を考えなくては。陽葉の脳裏に茉莉耶の顔が浮かんだ。
「……明さん」
「なあに?」
「二湖高校のその話、周りの子には話さないでくれないかな」
「え、どうして?」
そう問われた陽葉は、一瞬言い淀んだ。しかし、それ以上に、その噂が周りに広まることを避けたかった。
「わたしの知り合いかもしれないから。その人――」
その日の放課後、陽葉は荷物を置いてすぐ家を出た。幸いなことに、母は買出しのため家にはおらず、父はもとより会社にいるため、両親とは顔を合わせることがなかった。
陽葉は昨日の夜と同じ道を歩いて進む。目的の場所は、高台の公園のその奥、マテバシイの林の中にある星見の広場だ。
まだ陽は落ちない時間なので、星を見に行くことが本当の目的ではない。陽葉は、茉莉耶と会って話をしたかった。
道すがら陽葉は繰り返し空を仰いだ。未だに真っ白な雲が青空に漂っている。昨日茉莉耶は、星を見るのを雲に邪魔されたくないだろ、と言っていた。そのことを彼女が常に思っているのだとしたら、今日もあの場所に来るはずだ。夜までに雨さえ降らなければ、陽葉は一度も帰宅することなく、茉莉耶を待ち続けるつもりでいた。
歩きながら何度空を見ただろうか。陽葉はいつの間にか高台の公園に着いていた。辺りに人の気配はない。いつも通りの静かな空間。
陽葉は一度深呼吸した。空気の流れと、梢の囁きだけが聞こえる。
陽葉は、マテバシイの林を奥に進み始めた。
辺りは暗幕が下ろされたようにすっかり暗く、昼よりもずっと物寂しさを思わせた。
午後五時を告げる曲が同報無線から流れて既に二時間は経過しようとしている。陽葉は大仰なため息をつくと、身体をベンチの背もたれに預けた。自然と視線が上を向く。空一面を薄墨色の雲が覆っていた。
茉莉耶はまだその場所に現われていなかった。毎日のようにこの場所に通っているというのなら、今日だって来ていてもおかしくはないはずだ。
陽葉は心に歪な形の不安を覚えていた。
今朝、明が言っていた噂が事実で、その当事者が茉莉耶だったとしたら、そちらが心配でならない。待っていたいという思いはあるけれど、辺りは真っ暗な上、出掛けることを母親に伝えていないことを考えると、昨日の今日でまた心配をかけることは陽葉にとって避けたいことであった。
陽葉は数分後、おもむろにベンチから腰を上げた。もう少し待っていようかとも考えたが、両親が、娘が帰宅して来ないことを大事にしていないとも限らず、今日のところは帰ることにしたのだ。
待ち人が現われるのではないかと思い、できるだけゆっくりとマテバシイの林から抜ける。高台の公園に戻ると、人工の芝生の上に、街の灯りを見るようにして座っている人影を見つけた。後ろ姿しか見えなかったけれど、それは間違いなく茉莉耶のものだと陽葉はすぐにわかった。
「みやこさん……?」
そう言いながら陽葉が近づくと、声をかけられた茉莉耶は緩慢な動きで振り返った。その双眸が街の光を反射すると、一瞬きらりと光るその奥に、青い憂いが含まれていることを見て取った。
茉莉耶は数瞬、陽葉の顔を上目遣いに見ると、彼女が作ったとは思えないほど下手くそな笑顔を顔に張り付けた。
「陽葉……。やっぱり来てたんだな」
その声はやけに弱弱しく掠れ、太陽の下に出された雪のように、今にも消えてしまいそうな気がした。
「みやこさん、どうかしたの?」陽葉が優しく問う。
「ここにいるなら星見の広場まで来てくれればよかったのに。わたし、みやこさんに訊きたいことがあって待ってたんだよ?」
「……ごめんな」
茉莉耶はそう答えると、再び視線を街のほうに向けた。星空ほど綺麗ではないが、家家から放たれる優しい光が、陽葉のところまで届いていた。
茉莉耶は続けて言った。
「陽葉がいるんじゃないかって思ったら、行けなくてさ……」
「どうして? もしかしたら、あの噂は本当だったの?」
おそるおそるといった陽葉の声に、茉莉耶は反応をみせなかった。反応がないことが不安を掻き立てて、陽葉は必死になって言った。
「みやこさんダメだよ! そんなことしてたら不幸になっちゃう。お金が欲しいなら他にも方法があると思うの」
それを聞いた茉莉耶はこれ以上は耐えられないというように、くつりと鼻の奥を鳴らした。
「何がおかしいの?」
茉莉耶はなんとか笑うのを堪えると、
「ごめんごめん」と言って、また陽葉のほうを向いた。
「やっぱその噂ひろまってるんだな」
「うん。でも大丈夫。情報を持ってた子には口止めしてあるから」
陽葉の言葉に、茉莉耶は少しだけ驚いた顔をした。すぐに眉尻を下げると、一段をトーンを落とした声音で小さく言った。
「ありがと。けど、陽葉は間違って解釈してるみたいだな」
「え?」
「その噂な、あたしじゃなくて知り合いのなんだよ」
「知り合い? 同じ学校の?」
「そう」
言葉を短く切って、茉莉耶は立ち上がった。その動きは非常にゆったりとしていて、話が先に進むことを拒んでいるかのように陽葉には見えた。
背筋を伸ばした茉莉耶の顔は、陽葉の身長よりも顔一つ分高いところにある。
背景が薄墨色の空になり、中心に茉莉耶の姿が映し出された。陽葉には、すぐ目の前にいる人物がずっと遠くのほうにいるような気がした。
茉莉耶が一瞬だけ視線を外す。
「陽葉さ……、」
名前が呟かれた。陽葉の身体がビクッと揺れる。茉莉耶を見つめる目が行き場を失って、冷気に当てられたように固まった。
「あたしのこと、好きだろ」
「え……」陽葉は声を失った。
「友達とか家族とか、そういうのじゃない、本当の好き……」
陽葉は自分の心臓が跳ねるのを感じた。沸騰したお湯がお腹の底から徐々に上ってきて、顔も頭の天辺も熱くなった。汗が額と背中に滲み出る。
「ど、どうしたのみやこさん急に。その話と噂話は関係ないでしょ?」
陽葉の口調に焦りが含まれているのは明らかだった。
茉莉耶は視線を陽葉のほうに戻して、小さく首を横に振った。
「ううん、関係あるんだ。だから答えてほしい」
「そ、そんなことより、みやこさんが悪い事してなくてよかったよ」
「陽葉!」
茉莉耶は切れよく叫んだ。その声が高台の公園に響き、一瞬、木々がざわめいたように陽葉は感じた。
陽葉の背中を冷たい汗が重力に従って流れ落ちる。今すぐその場から逃げたい気持ちにかられるのだが、足は動かない。急かされたことで声が肺から押し出される気がした陽葉は、
「す……き……」と小さな口からぼそぼそと声が出てきた。
「何?」茉莉耶は訊く。
陽葉は乾いた唇を舌でなめて湿らせると、スー、と音が聞こえそうなほどに息を吸った。小さな胸が少しだけ膨らむ。両手は胸の前で握りしめられ、身体を守るように全体が力んでいるようだった。
瞬間、陽葉の口から声が飛び出した。
「好き! 大好き! みやこさんと会ったその日からずっと、みやこさんのことを想ってた!」
陽葉は言い切ると、それほど疲れたわけではないが肩で息をしていた。取り込まれる酸素の濃度が濃いのか薄いのかわからないままでいると、深海のように静かな公園に自分の息遣いだけを陽葉は聞いていた。
陽葉が口を閉じてからも茉莉耶は目を瞑ったままで、その様子は名曲を飲むようにして聴き入っているようだった。
少しだけ風が強くなるのを感じる。空に浮かぶ雲は動いているのかいないのか、まったく変わり映えはなく、じきに降るだろう雨も落ちることを迷っているように見える。
そんな空模様を思わせる茉莉耶の声が聞こえてくる。彼女の声は、先ほどと同じく冷然としていた。
「ありがとう、陽葉。でもその気持ちには応えられない。ごめん……」
何を言われたのか一瞬陽葉には理解できなかった。咄嗟に、え、と声が出てしまう。
茉莉耶は続けて言った。
「あんたがあたしに好意っていうか、憧れ的なのを持ってるのはなんとなく気づいてた。それでもずっと気がついていないふりをしてたのは、あんたを傷つけたくなかったからなんだ」
陽葉の耳がやっと茉莉耶の声を正しく聞き取り始めると、ごくりと一回空気を飲み込んだ。普通なら空気の味は無味無臭だというのに、その時だけは少しだけしょっぱく陽葉は感じていた。
「本当にごめんな、陽葉……」
「……なんで、ですか」
陽葉の声は掠れていた。吐息混じりのその声は、今にも空気に溶け込んでしまいそうなほどに薄く細かった。
茉莉耶は優しく諭すように言う。
「なんでって、言っただろ。陽葉を傷つけたくなかったんだ――」
「違う!」
茉莉耶の言葉の最後を陽葉の突き抜けるような声がかぶさった。
茉莉耶は驚いて陽葉の顔を見た。その表情は既に崩れかけていて、水膜で歪んだ瞳からは透明な雫が落ち始めていた。
「陽葉……」そう茉莉耶は呟いた。
「なんで、わたしの気持ちに、応えられないの……」
陽葉の声は訥々としていた。言葉が区切られては浅い呼吸を繰り返し、息苦しそうな様子を見ていると、茉莉耶も喉に何かがつっかえる感覚を覚えた。
茉莉耶の手は、自然と自分の首元に置かれていた。
「なんで答えられないって、わかるだろ? あたしたちは女同士だ。同姓が同姓と恋に落ちるなんて気持ち悪いだろ」
「そんなことない!」
陽葉が叫ぶと、茉莉耶は咄嗟に公園を見回した。
「陽葉。あんまり叫ぶと――」
「茉莉耶さんにはそんなこと言ってほしくなかった」陽葉は茉莉耶の声を今度こそ遮った。
「茉莉耶さんはちょっと冷たいところあるけど、星好きだし優しいし、わたしの気持ちもわかってくれると思ってた」
「それは買いかぶりだよ、陽葉」
「そんなことない!」
「そんなことあるって。あたしはあんたが思っているほど綺麗な人間じゃないんだ」
「だから、そんなことないっ――」
「そんなことあるんだよ!!」
茉莉耶の声は高台の公園に響き渡った。いつもの彼女からは想像できないほど取り乱してる様子に、陽葉は無意識に口をあんぐりとさせていた。涙は枯渇してしまったかのように止まり、視界がにわかに色づき始める。
茉莉耶はそのままの調子で続けた。
「たまたまあんたがあたしを慕ってくれていて、それがわかってたから無理に大人な態度で接してた。でも、それが凄いストレスだった。あんたを失望させたくなかったから、他にもあらゆる事を隠してた。知らないだろ? あたし、女が好きなんだ」
陽葉はその言葉を聞いて一瞬身体を縦に揺らしたが、茉莉耶は気がついていないようだった。
「別にそれだけならいいんだ。けど、あたしの場合は好きになった女の子を不幸にしちまった――」
茉莉耶は顔をしかめて俯いた。
言葉が途切れると、陽葉は心にあった単語を思い出した。茉莉耶がこれまで再三話に出している「リン」という言葉。茉莉耶自身、それを言ったところで触れることもせず、陽葉も何か事情があるのだと思い訊くことはしなかったが、今ばかりはその質問をしないほうが憚られて口を衝いて出た。
「……もしかしてその女の人の名前、リンって言うんじゃないですか?」
陽葉の言葉に、茉莉耶は驚く素振りをひとつもみせなかった。
「ああ、そうだよ。たまに口滑らせて言ってたから気づくに決まってるよな。――あたしが不幸にした女の子っていうのが、そのリンって奴なんだ。小学生の頃からの知り合いで、家も近かったし普通よりも仲が良かった。好きなものとか、嫌いなものとか趣味がよく合ってな、何かとつるむことが多かったけど、頭の造りはリンのほうがよかった。
中学生の頃にはお互いを想い始めて、同じ高校に進学しようとも話し合ってた。けど、リンの親のほうが厳しくて。元からリンは頭のいい奴だったし、教師からも期待されてて、いい高校を推薦されてたんだけど、反対を押し切ってあたしと同じ高校に進学することになった。それがいけなかったんだよな……。リンは高校に入っていつの間にか同姓のあたしじゃなくて、異性に恋をするようになってた。昨日まで知らなかったよ。さっきの噂話、あれ実はりリンの事なんだよ」
陽葉は目を見開いた。二湖高校の生徒の噂に自分の知り合いが関係していると思い口止めをした陽葉だったが、間接的でありながらも結果、知り合いが関係しているとは思いもよらないことだった。
茉莉耶は話を続ける。
「人伝に聞くまでまったく知らなかった。リンも話してくれなかったんだよ。昨日陽葉がここに来る前からメールでリンと話してたんだ。話題を変えたからあんたは気がつかなかったと思うけど、あの時あたしは凄く傷ついてた。裏切られた気がしてな。それ以上に、あたしがリンの気持ちに気がつけなかったことに腹が立った。もう合わせる顔もないし、向こうも会いたくないと思ってるんだろうな」
茉莉耶の声は抑揚がなく、感情を失ってしまっているようだった。その声を聞いているだけで陽葉の胸はズキズキと痛んだ。
茉莉耶はずっとリンという人物を慕っていたが、突如として裏切られる形になってしまったのは苦痛に違いない。しかし誰にもリンを咎めることはできないはずだ。男と女が恋に落ちるというのは至極自然なことで、同性同士が関係を持つほうが珍しいくらいなのだから。それを茉莉耶はわかっていて自分の中だけで解決しようとしていたのだが、結果的には内に留めることができず、気を紛らわすために高台の公園に足を運んでいた。静かな場所で一人になるのを求めていたのではなく、誰か自分の心を受け止めてくれて似たような境遇の人物に話をすることを望んで。それが陽菜になってしまったのは運命的なものはひとつもなく、ただの偶然に過ぎなかった。
陽葉はどうにかして茉莉耶を元気づける言葉をかけたかったが、思うように言葉が浮かんでこない。自分ならそうならないと口では簡単に言えるが、過去の茉莉耶たちもそういう会話があって、後に悪い状態になってしまったと想像すると今話すことが余計無駄な気がして口が開かなかった。
茉莉耶はため息をつくと、口端を軽く吊り上げて陽葉のほうに向き直った。
「だからな、陽葉。あたしは同じことを繰り返したくないんだ。あんたには星になる力もなる道もある。そんな幸せの道を盲目的に外れてほしくないんだ」
「違うよ、みやこさん。わたしにとってはみやこさんは星だったよ。ずっと見ていたくなるほどの綺麗な星だった」
茉莉耶の声が終わると同時に、陽葉はそう言った。
茉莉耶は首を横に振る。
「あんたの気持ちを否定することはしない。けど、あたしは星にはなれない。もしあたしが星になったら陽葉はそこしか見なくなっちまうだろ?」
陽葉は黙ってうなずいた。
「希望ある奴をそうはしたくない。あたしの気持ちもあるんだ。罪悪感はもう味わいたくない。ここで星を見るようになって初めて気がついたんだよ。何かわかる?」
「わかんないよ」
陽葉が即答すると、茉莉耶はクスクスと笑った。やっと茉莉耶の表情に自然な笑みが返ってくる。
「星ってな、空一杯にあるんだ。それはもう数えきれないくらい。太陽や月みたいにひとつのものにも凄い魅力がある。太陽みたいに明るい人、なんて譬えかたをするけど、本当にそうなれる人なんて多くいないんだよ。でも星なら無数にあるんだから譬え淡い光のものでもその一つになれる可能性は誰にだってある。そしたら他の星たちから色んなことを知ることができるだろ? 早い段階で一つに絞られないことが一番の幸せなんだよ」
陽葉は少しの間黙っていた。
高台の公園に吹く風がマテバシイの葉を鳴らして過ぎ去っていく。その風がどこまで続いているのか誰にも見当がつかない。風もまた星みたいなものなのだろうかと陽葉は思った。
「みやこさんだって今からでも星になれるってことですよね」
陽葉は強い口調で言った。自分の意見に同意してくれることを願って、半ば強引にうなずいてくれるように。
しかし茉莉耶から返ってきた返事は、陽葉のことを簡単に裏切った。
「ううん」茉莉耶は緩慢な動きで首を横に振り、
「あたしは雲でいいんだ。好きだから。でなきゃ、曇り空を見上げて目を凝らすなんてできっこないだろ?」
そう言って茉莉耶は破顔した。いつしか戻ってきた憧れの人の笑顔を、陽葉は自分だけ時が止まってしまったかのように見つめ続けた。どんな目で見ても陽葉にとって茉莉耶は瞬く星にしか見えなかった。
理解したくても心がそうさせてくれない。これまで陽葉が持っていた茉莉耶という人の像がはっきりとしていて大きく、簡単には消せ切れない。当然、陽葉にはその像を消すつもりはないだろう。口にしなければ問題ない。彼女はそう思って、陽葉に訊いた。
「また、ここに来ますよね?」
茉莉耶は空を見上げた。
陽葉がその動きを見つめると、頬に冷たい何かが当たった。それが手や、鼻先に当たるのを感じると、次第に強くなる雨だと気づき、陽葉は視線を上げることができなくなった。
雲の向こうの星たちも ゆお @hdosje8_1
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