第60話 パワープレイ
飛行訓練を終えた森人忍部隊森羅は僅か30名体制なのに想定以上に諜報範囲が広くなった。ダンダムはおろか旧王都近くまでその魔の手を伸ばしていたのだ。
「殿、旧王都を帝国兵三百、出立したでござる」
背後の棚の陰からレインの声だけが響く。
「目的地はここか?」
過剰演出にやや辟易しながら応える。普通に出てきて報告すればよくない?感知で位置はバレてるんだし。
「いえ、どうやらダンダム自治都市を平定し、対魔我羅の橋頭堡とする思惑にござる」
自治都市も短い命だったか。何だかダンダム民が不幸過ぎて同情したくなるな⋯⋯。
「それともう一つ。もうじきダンジョンから魔物が溢れるでござる」
⋯⋯ダンダム終了のお知らせでした。
戦争始まってから今まで間引きもしてなかったか、そういえば。
「こちらの防備は?」
「川のこちら側の魔我羅の防備は問題なく。ただ森人集落は川向こうなので少なからず被害が出そうにござる⋯⋯」
「魔物がダンジョンから出て、散ると面倒だな⋯⋯ダンジョン街は無人か?」
「ダンダムの兵が常駐しているでござる」
「⋯⋯厄介だな」
勝手に間引く訳にもいかない。ダンダムの為にダンジョン街を攻めてヘイトを買うのも何だか癪だ。
「ガロスとロイを呼んでくれ」
「承知」
気配が音もなく遠のいて行った。
何でそういう所だけ無駄に有能なんだアイツは⋯⋯。
「⋯⋯という事で割と面倒な事になってる」
レインが2人が連れて来たところで事情を説明する。
「ほっといて帝国と魔物をやり合せとけばいいんじゃねぇのか?」
ガロスは面倒臭そうだ。
「どちらも命あらば殲滅いたします」
脳筋代表のロイは男気が溢れ過ぎてて役に立たない。
うーむ。
「俺が考えている最優先事項を伝える」
2人を見渡し、一拍間を置き言い放つ。
「ダンダム娘が、キャー
完全に沈黙した2人に追い打ちをかける。
「この村の命運は2人の働きにかかっている。頼んだぞ!」
決まった!
権力者オールスローだ。メガネかけていたら完全に光っていたはず。
面倒事の解決は人を成長させる。昔は若いうちは金出して買ってくるくらいだ。モチベーション?そんなもん無くても一定の成果を出すのが社会人ってやつだろう?
いつまでも俺が解決していたら俺が居ないと何も出来ない環境に慣れてしまう。そう、慣れとは恐ろしい。気付かない内に身体に染み付くのだ。
面倒事を丸投げする自己弁護はそこそこに、失敗してもそれほど困らない事なので高めのミッションにしてしまったが各自の働きに期待するとしよう。
難しい顔になってしまったガロスに魔法の一言を告げる。
「ガロスの嫁も見つかるといいな」
「⋯⋯あぁ」
魔法の掛かりはイマイチだった。
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