第51話 出兵準備


準貴族の士爵も対象なのか聞いてみた所、やはり対象なのだそうだ。




「貴方は?」




「シュウイチ・マガラ。ここの北の士爵だ」


流石にこの服装では貴族だと分からないか。貴族っぽい服装なんて持ってないけど。




「それは丁度良い。ダンダム辺境伯にも言付けを頼む」


言うや否や馬に飛び乗り駆け出して行った。




「面倒な事になったなぁ⋯⋯」


ガロスも弱り顔だ。ようやく復興が軌道に乗ってきた所に派兵しろは厳しいだろう。




「⋯⋯ガロス、ダンダムは兵を出せるのか?」




「出せて元傭兵団の20名と領主様だな。売っぱらっちまって馬車も足りねぇし、団長も出せねぇ」




少ないな⋯⋯。こちらも辺境伯より多い兵数にするのは微妙だし、それ以下の兵数でいいか。




「出さない訳にもいかないか。編成にはどの位掛かる?」




「そういうこったな。⋯⋯明後日には出れる様にするさ」




王都まで馬車で片道10日、宿場町があると言っても毎晩泊まれる距離ではない。それでなくとも急ぎで王都まで駆けねばならないのだ。




20人分の食料の手配だけでもウンザリしてしまいそうだ。それでも兵数としては心許ないのでマガラのゴブリン隊との合流を提案し、俺達は村へと帰還する。








「帝国が攻めてきた。挙兵して王都に向かう」


ゴブリン四天王もといダリ一家と最終兵器幼女サーラちゃん、お色気愛妾エメリーヌ、ポンコツ森人レインの主要メンバーを集めブリーフィングだ。




「出発は明後日の早朝。編成は俺と第1投槍隊12名だ。行けるな?ロイ」




「はっ!お任せ下さい閣下」




ロイは俺が手ずから教育した隊長になるべくして生まれてきたゴブリンさんだ。ダリの旦那ズの1人であり第1投槍隊の隊長でもある。ダリは早くもおめでただった。




元来どちらかと言うと低視認ロービジリティ色なゴブリンさんに、腰まである高視認ハイビジリティな黄色の鉢金は我が村のエースの証。第1投槍隊に編隊ヘンタイ飛行まで仕込んだのは完全なる俺の趣味だ。




⋯⋯不気味な立体機動も数が揃うと格好良く思えてきてしまったんだ。いや、きっと格好良いはず。何より編隊での空襲メテオは壮観だし。面制圧もできるし。






「今回は王都で奴隷を購入する事も視野に荷車を多めに編成してくれ。食料も向こうで売れるかも知れんから在庫を持てるだけ持って行こう」




「御意に」




話をしていると目的がずれてきて運送業な斥候隊の方が向いてそうな気もしてきたけど、何があるか分からないので最大戦力の方が良いだろう。




「⋯⋯他の皆は村を頼む」




サーラちゃんは着いて行きたそうにしていたがエメリーヌがたしなめてくれていた。できた女だ。




しかし、全員と同じ言語で話ができるってやはり素晴らしい。こちらにきた当初とは雲泥の差だ。ゴブリン斥候隊には森人語も操る御仁もいるらしい。






そうして、サーラちゃん宥めつつ添い寝してたら何故か朝にはディートも添い寝してたり、エメリーヌに貪られたりしながら2日後の早朝、我らマガラ軍13名、荷車4台は武運を祈られながら出兵した。






⋯⋯寝不足だ。

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