第50話 外的要因と経済成長


そんなこんなで始まった森人達との交易だが文明レベルに差があり、こちらが支払う対価に困る羽目になった。




森人達の方が農業も工業も文明度が高すぎて、物々交換にも中々釣り合う物がない。そしてこちらの貨幣も使えないのだ。




結局の所、輸出品目は魔石と魚の干物、葦の芽くらいしか無かった。しかしながら森人からもたらされた道具や調味料、酒などはゴブリン村の生活レベルを大きく向上させた。






ダンダムからも魔石を催促されるので到底俺1人では回しきれず、言葉を覚えたゴブリンさん達から魔法を教えダンジョンを駆逐しまくった結果、ゴブリンさんの投槍隊はゲイボルグ隊へと変貌し、斥候隊は運送屋さんに変貌した。




やたら森人集落とゴブリン村の流通が加速した。向こうでは郵便屋さんもやっていたりする様だ。この人材派遣による外貨収入が馬鹿にならない。




魔法を教えたと言っても中丹田練りの加速減速や飛行までで、サーラちゃんとは違い魔具指輪を試してもらったりオナラが燃える実演などまではやってない。




そしてエメリーヌを愛妾として受け入れると、ダリは何故か婿を3人迎えた。ゴブリンさんは多夫一妻制なんだろうか⋯⋯。確かにそんなイメージも無くはない。他にも何組かが同様に婚姻した。




異文化に茶々を入れるつもりはないので皆で祝福した。早くゴブリンさんを増やして欲しい。






ダンダムからの買付商人も戻ってきた。こちらの輸出は木材を中心に、以前の水準まではいかないものの順調である。食料自給の目処もつき野菜も出荷する様になった。






⋯⋯バタバタと忙しなく動き回っている内にダンダムの悲劇からは3ヶ月が過ぎていた。






ゴブリンさん達が行動範囲と活躍の場を広げ、村の労働力が足りなくなってきたので、今日はサーラちゃんとダンダムに奴隷の買い付けにやってきたのだ。




ちょっとそこまでお買い物みたいなノリだが、買うのは人なのだ。怪しい露店ではなく信頼できる所で買いたい。




という事で早速、城のガロスの元へ向かう。






「久しぶりだな。ガロス」




「これはこれはマガラ士爵。ようこそいらっしゃいました」




⋯⋯誰?




案内された場所で、振り返ったガロスは何か小綺麗になってて口調まで変だ。




「⋯⋯気持ち悪いな」




「おぃおぃひでぇな。こっちだって苦労してんだぜ。なんせ元傭兵が文官なんてやってんだからな」




サーラちゃんもクスクス笑っている。最近笑顔が増えた。




状況を聞くとマックスは無事当主を継ぎ、団長が騎士団長になりガロスが文官筆頭になったそうだ。出世したなぁ⋯⋯。上層部が元傭兵ばっかりだけど大丈夫なんだろか。




「んで、今日はどうした?」




「農作業をやる奴隷が欲しいんだが⋯⋯良いあてはないか?」




「⋯⋯若いのは借金のカタに持っていかれたからなぁ。ジジババくらいしか居ねえぞ今だと」




うーん。村の将来を考えると若い方が良いんだけどな⋯⋯。




「ゴブリンは居ないか?他の亜人種でもいい」




「居ねぇだろな。奴隷自体が品薄だからな」




ダンダムの農家で使う奴隷も足りていない模様。いや奴隷に限らず全体的に人手不足みたいだ。




諦めて遠征して野良ゴブリンさん探しでもするか⋯⋯。






⋯⋯と、そこに砂埃と共に早馬が駆け込こんで来て、思いもよらぬ至急の言葉を告げる。




「王命である!帝国からの侵攻有り!ダンダム辺境伯においては貴族憲章に従い速やかに挙兵、参戦されたし!」






⋯⋯帝国?




呆気に取られる俺とガロスは顔を見合わせるだけだった。




もしかして俺も?


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