第48話 やっぱり嵌められる


ダンダムの顛末を聞くことができたのはマックスと傭兵達が村を発ってから3日後の事だった。






やって来たのはダンダム傭兵団のガロスと3名。ゴブリンさん達がいつもの休憩所に案内する。




「⋯⋯ダンダムは上手くいった様だな」




「お陰さんでな。壊れたのは城門くらいだわな」




マックスが風撃ぶっ放しで城門を破壊すると相手方は士気が折れてあっさりと潰走。首謀者はその場で処刑され、三男は拘束。他は奴隷落ちになり元領主の借金のカタに引き渡されたそうだ。




ダンダム、人口六千人ぐらいしかいないのに数百人が奴隷落ちって⋯⋯。






文官も含め殆どの特権階級だった騎士は家ごと壊滅してしまったので、なし崩しにダンダム傭兵団が騎士的職業軍人ポジションをゲットした模様。




「宮仕えなんて柄じゃねぇんだけどな⋯⋯」




何だかんだでガロスも満更でもなさそうなんで良かったんじゃなかろうか。




「そんなに奴隷にしてダンダムは大丈夫なのか?」




「暴動に参加してたのは兵役に就いてた農家の次男三男が多かったみたいだしな。そっちは寧ろ好都合らしいぜ。領主に対する感情は最悪だがな」




世知辛い。世知辛過ぎる。






「問題は文官までおっ死んじまって政が回らない事だな。誰も何も分からねぇ状態だ」




「それは⋯⋯大分不味いな」




「次期領主様も団長も借金取りの対応で大わらわよ。とりあえずお前さんから預かってた魔石を引き渡して一息ついたがな」




笑いながら話すガロスだが全然笑えない話だ⋯⋯。正直ダンダムには近寄りたくない。




「でだ。魔石集めを頼めないかって話なんだが何とかならんか?次期領主様は準男爵だかに陞爵してダンジョン街も見てくんねぇかって腹積りなんだが」




「間引きもできないから、また人も居ない所を押し付けるって事か?」




「すまん。結果そうなる」




「こちらも見る場所増やせる程、人手は無いんだが⋯⋯」




「頼む。助けてくれ」




ガロスにそう言われると弱い所だが⋯⋯。






「そもそも寄親でもないのに陞爵とかできるのか?」




「その辺は俺には分からん」




「⋯⋯マガラの領地にするのも陞爵も無しだ。間引きは出来る範囲でだ」




「それでも助かる」




頭を下げてガロスは去って行った。




母上様は連れて行かないんかい⋯⋯切羽詰まり過ぎて余裕もないのだろう。






サーラちゃんと遊んでくれていたエメリーヌには一応、ダンダム奪還と逗留はもうしばらく延びそうだと伝える。




「⋯⋯このまま愛妾として側に置いて欲しゅうございます」




うーむ。何だか面倒な事を言い始めたぞ。


愛妾とは何ぞや?を聞いてみると正妻ではない妻で側室と同じ様だ。一夫多妻で女性軽視のこの世界では、貴婦人達は未亡人になると他の余裕のある貴族に嫁いで生活の面倒を見てもらうのが一般的らしい。援助交際?




そもそも正妻もいないんですけど⋯⋯。




サーラちゃんも何故かウムウムと納得気な雰囲気を醸し出しているが⋯⋯もしかして談合済みなのか?






とりあえず「前向きに検討する」と日本人らしくお茶を濁し逃走する事にした。






中々、某13の東洋人スナイパーの人の様にはいかない様だ。目指すべきスナイパー像を間違ったかな⋯⋯。




それはさておき、何だろうこの拭いきれない違和感は⋯⋯。




お互いに人となりも分からない状態でも保身オンリーで嫁ぐ所だろうか?それとも場の整え方が巧過ぎる所?何となくハーレムっぽい展開だけどハーレムってこんなんだっけ⋯⋯?




沈む夕日を眺めながら、俺の中の異世界テンプレ概念も少しずつ音も無く崩れていく様な気がした。

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