第44話 パワーレベリング


このゴブリン村からダンジョンまではそれなりの距離があった。徒歩だと3日くらい掛かるだろう。




最近は飛ぶのは慣れていたので人間1人くらい増えても何とかなるかなと思ってたけど一つ誤算があった。








サーラちゃんも行きたがったのだ。




しかも喋った。


袖を握って、か細い声で「シューイチ」って。




どうしよう。




嬉しくてマックスの事なんて、もうどうでも良いんだけど。






1人でパッと行ってパッと帰ってくるべきか⋯⋯。




2人連れて飛ぶのは流石になぁ⋯⋯荷物も持てなくなるし。商人が逃げてしまったダンジョン街で補給も出来るか分からないので食糧くらいは持って行かねば。




マックスでレベルアップ実験とか考えてたけど、飛ぶのも秘匿しときたい所ではあるからここは計画変更してサーラちゃんと行こう。マックスは放置で。






「分かった。準備しておいで」


コクリと頷き駆け出すサーラちゃん。マントも着けてくるんだよ。




「マクシミリアン殿。ちょっと魔具取ってくるのでここで待っててくれ」




「何?⋯⋯行かなくてよいのか?」




「ああ。大丈夫だ問題ない。団長!2日程留守を頼む!」


さらりと前言撤回してお手伝いの約束を反故にした俺は勢いで乗り切る。




「了解した!」




「ダリも警戒を緩めない様にしてくれ」




「承知だす!斥候隊を出すだす」




装備を整え、携帯食料と水を持つ。サーラちゃんもちゃんと革鎧とマント装備だ。




「では行ってくる」




「お気を付けてだす」






サーラちゃんと人気の無い所まで歩き、飛び上がる。


速度を出すと結構寒いのでマントの中に包み込んで抱っこだ。






3時間程でダンジョン前に到着。やはり人が全然いない。ダンダムに向かったのだろうか?




「具合悪くなったりはしてないか?」


コクコクと頷く。顔色も問題なさそうだ。




「今日はダンジョン内で夜を明かす。ダンジョンに慣れるとマナの動きが良くなるんだ。ただし具合が悪い時はすぐ言うんだぞ」




「うん」




声を出してくれた。良い傾向だ。


頭をひと撫でして先にダンジョンに降りる。敵影は無し。




あー、明かりになる物持ってくれば良かったかも⋯⋯。






「サーラ!降りれるか?」




ロープを伝って降りてきた。意外と元気そうだ。




双剣を抜くもいつも通り虫達を踏み潰し、お馬様ルートを進んだ。しばらく間引きされていないせいか敵は多めで思ったより時間がかかる。魔石の回収は巨大な虫に若干青くなってるサーラちゃんにお任せだ。




お馬様も吼える前に開幕メテオで片付ける。




「マナの動きはどうだ?」




ふるふると横に振られる頭。流石にまだ変わらないか。




「ここで休憩にしよう。昼寝してもいいぞ」




慣れない暗がりに巨大な虫。精神的に辛いかもしれない。


胡座をかき、上に座ってもらい背凭れになる。




この位、近ければサーラちゃんのマナの動きも感知できる。




「ダンジョンは怖くないか?」




「⋯⋯大丈夫」




「そうか」






しばらくじっとしていたら俺もついウトウトしてしまった。




ハッと目が覚めるとサーラちゃんのマナの流れに違和感を感じる。まだ寝たままだがどうやら無事レベルアップした様だ。




起こすとマナを循環してもらう。中丹田も開きそうだ。




「違いが分かるか?」




「ん、全然⋯⋯違う」




再度マナ循環をレクチャーし、拙いながらも中丹田練りも出来る様になった。




「なるべくその状態を維持する様に」




「うん」






その後も安全第一に進み、蜘蛛もさっくりやって蜘蛛部屋で一夜を明かした。


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