第34話 一先ず落ち着く
夜中にサーラちゃんを強奪しに行ったろか等やや物騒な事を考えながら傭兵団詰所に顔を出してみると久々の噛ませ犬チンピラ傭兵がいた。
「うおっ!⋯⋯閃撃っ」
何か凄く挙動不審だ。飛び上がって道を譲り、壁際に張り付いてる。こっちは誰彼構わず噛み付いたりしないのに。
「久しいな」
「お久しぶりっス!」
下っ端キャラが板に付いてるな。
年上を敬う心はちゃんとあるのかな?直立不動だ。
「よぅ。シュウ!魔具はどうだった?」
団長もやってきた。
「繋ぎは助かった⋯⋯後日また連絡あるそうだ」
領主への繋ぎのお礼と、サーラちゃんは返してもらえなかった事を伝えた。
「明日、魔具のお披露目が決まった。その後になるだろうな」
何でもダンダムの様な魔物が蔓延る辺境では、領主軍の軍事力アピールが統治において何よりも重要らしい。ダンダム初の魔術使いの誕生を派手にお披露目したい様だ。
まぁ分からんでもないけど人質返す方が先だろ⋯⋯。
「嬢ちゃんは丁重に扱われてる。安心して欲しい」
使用人部屋に軟禁されてるそうだ。奴隷だからと酷い目に遭ってなくて良かった。若干、溜飲が下がった。でも、1人で大丈夫かな⋯⋯。
「世話役も付いてるからそう心配するな」
心配してるのを見透かされたらしい。ちょっと気恥ずかしい。世話役ってティリさんかな。
「⋯⋯そうか。調べてくれてありがとう」
「今回の件は王都の傭兵団の伝手にも知らせておいた」
え?どういう事?
「迷い人だけに労役なんぞ乱暴に過ぎる。王室の意向を逸脱してるからな。まぁ悪い話にはならんだろう」
悪い話じゃないんだろうけど⋯⋯何だかとっても面倒な匂いがします。
「ちなみに王都まではどの位で話が伝わるんだ?」
「そうだな⋯⋯。天候に恵まれたら10日くらいだな」
うん。まぁそういう時間感覚だよねー。往復すると1ヶ月的な。
「⋯⋯色々世話になったな」
「単独で魔具探索なんつー無理な仕事をやった上にウチの稼ぎにも貢献してくれてんだ。その位はさせてくれ」
アウトローな傭兵団だけど付き合ってみると人が良い奴も多い。余裕がある世界ではないから、赤の他人には構ってられないけど身内には優しいんだろな。
俺の為にと行動してくれた気持ちに頭を下げて傭兵団詰所を後にした。
結局、また待つ事になってしまったのでダンダムの外まで歩き、魔具利用で解った魔素殻と触媒魔素の実験を行う。
マナではなく魔素と言っている様に体内で巡っているマナとはまた別の存在だ。自分で好き勝手には動かせない。
魔具の指輪では、柔らか目の気体も逃さない魔素膜とも言える様な魔素殻と複数の触媒魔素を使っていた。
魔具の短剣も、気体も逃さず高圧にも耐えうる硬い魔素殻。
気体を逃さない魔素殻が作れれば窒息魔法すら作れるはずだ。硬ければシールドにも使える。
まずはイメージ。
魔素⋯⋯殻⋯⋯魔素⋯⋯膜⋯⋯!
ささやき⋯⋯えいしょう⋯⋯いのり⋯⋯ねんじろ!
あれじゃない⋯⋯こうじゃないって⋯⋯違うってば!
硬さなんてなく、糸を引く納豆の如く⋯⋯。
精々がスッカスカの蜘蛛の巣みたいのしか作れん!何でやねん!
射程もネチョネチョして飛ばせる訳じゃねーし!縮んだりする訳でもねーし!伸びたら伸びっぱなしだよ!
何か個人の周波数的なのが決まっていて、これしかできない雰囲気がある。
気を取り直して触媒にチャレンジするも1種類しかでけへん。何でやねん!そもそも何の触媒やねん!
⋯⋯魔具⋯⋯恐ろしい子。
左手の人差し指に嵌めたままの指輪を眺めながら溜息を吐いた。
⋯⋯魔具が何個あるとか聞かれなかったしこれは俺が持っていてもいいよね?火球ってとても威圧に便利そうだし。
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