第3話 最優先課題


 石器時代の原始人から鉄器の手斧を装備した原始人に進化した俺は、今日から新しいミッションに立ち向かう。


 チラ見レベルだが、この世界の文明レベルは恐らくファンタジーのスタンダードな中世ヨーロッパくらいだ。


 ただ、この開拓村はいいとこ弥生時代。文明開化が待ち遠しい。


 身包み剥がされて現在は膝丈までの貫頭衣の帯に手斧を差し、朝日に向け今日も歌う。


「あーたらしい朝がっ」

「水、行く?」


「ああ、うん。水、行く」


 歌をスルーして最年少のキー君が木桶を持って水汲みのお誘いに来てくれた。


 この村自体、必要語彙数が少ないのでようやく片言現地語で何となく意思疎通ができる様になってきた。



 川までは徒歩五分。しかしその道のりは厳しい。

 裸足でスタスタ進んで行くキー君だが、俺にはそんな速度は出せない。


 藪の中の獣道を裸足とか……足裏を怪我して破傷風で御陀仏が最近の予想死因ナンバーワン。


 レベルもスキルも知識チートも気になっているが喫緊の課題は靴だ。マジで死んでしまう。



 藪と木々の間を抜けて落差1メートルほどのちょっとした崖を下りると、ザ・渓流といった趣の沢が見えてくる。


 魚も獲れればと思うが、水辺はやはり危険でノンビリ魚釣りとはいかない。


 先日も対岸にゴブリンがいて石投げ合戦になったくらいだ。



 そう、ゴブリンさんがいたのだ。あのメジャーな!

 ファンタジー物にはほぼ出演されているゴブリンさんが!


 緑色というか茶色だったけど俺の中ではアレをゴブリンさんと認定しました!現地語だと何を意味するのかは不明だけどアレはゴブリンさん!



 ファンタジー物でよくある設定の魔獣と野獣の区別とか魔石が有る無しはまだ分からないけど、それほど敵意が高いタイプではない様だ。俺とキー君の2対1で石を当てたら逃げていったので。


 そういえば夜中やってくる狼もデカいけど魔獣なんかな?



 それはさて置き、手斧があるとはいえあまり長居をして敵性生物にエンカウントするのが怖いのでさっさと水を汲んで撤収する。


「行く?」

「うん。行く」


 結構重いので休み休み戻る。


 キー君はガリガリなのに肉体労働に慣れているのか、一回に俺と同じ10リットルくらい運ぶ。


 朝飯は芋一つとお湯。晩飯も芋一つとスープ的な物だけなので、強制ダイエットな食料事情も何とかしないと体力が持たなそうだ。


 でも、魚獲った所で奴隷カースト上位に強奪されるだけなんだよねー。あんたら芋もこっちより食ってるでしょ。きっと。


「火、付けて」

「うん」


 我々奴隷カースト底辺は上位者のために、乾燥させた葦を薪に火を起こし湯を沸かす。


 言われる前に、殴られる前にやっておく。



 うーん。靴か……革はまだ無理だしなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る