第2話





結局、僕はひとりだったのか。






馬鹿だ。


初めからこうなるとわかっていたはずなのに、縋り付いて…。


本当に馬鹿だ。

自分から君の仕掛けた罠にはまりに行くなんて。


全く、君は凄いよ。これでも、警戒心は強い方だと思っていたのに、君の姿勢にまんまと騙されたわけだ。否、解っていながらそれでも、縋り付きたかったのかも知れない。




さて、どうしようかな。

これから、君たちが僕を殺す為に僕の同類である敵陣に攻め込み、僕にやつらを倒させて最後に僕を殺す。そうなれば、見事にクレイラントの者が全滅して、君たちは大喜びだろうね。


僕はただの駒として、そこにいたに過ぎない。誰も気に留めはしないだろうね。


かなしい…とは思わないけど、虚しいのかな。


また同じことを繰り返してしまった。我ながら呆れるよ。


でも、今度のは本当の終わりだね。


もう、十分生きた。受け入れるよ。君たちが喜ぶのならね…。だから、僕は笑顔で君たちの前で散ろう。君たちがどう思うにしても、僕はそうして散って行きたいんだ。見届けて欲しいのかもね。



それぐらいの僕のわがまま、受け入れて欲しいな。




くすっ。







気持ちが決まり、そろそろ皆の処へ行こうかと思ったところで、声が聞こえた。




「クリス。何してんだ。」


「テラ。気持ちの引き締めだよ。」


「…そうか。これで終わりだもんな。」


テラ、テラード。それが彼の名前。僕が所属しているチームの一人。彼は僕のことをどう思っているんだろうね。彼の言葉と僕の言葉。同じなのか、そうではないのか。


「そうだね。」


「やっぱり、嫌か?」


疑問口調なのに彼の態度は、目は確信している。僕が同郷を切り捨てることが出来ず、迷っているのだと。残念だけど、僕はもはやあそこに思い入れなんてないんだよ。一度目の過ちはあそこだったのだから。テラ、君も僕をわからないんだね。わかってたよ。


「そんなことはないよ。」


「本当か?」


そんなに疑わなくても。僕は少しひねくれていて、素直じゃない時も多いけれど、君たちと一緒に居て心地良かったんだよ。本心で接していたこともある。利用されているのに気づきながらそれでもいいと思っていた時期が…。


「本当だよ。」


もう、迷うことはないし、遠慮なく切り捨てるよ。あの人達も、君達もね。


「そうか。ならいいけど。」


それこそ本当に?と思うよ。


でも、これ以上いくら話しても僕の心は変わらない。


「そろそろ行こうか。」


「…あぁ。そうだな。」


さあ、終わらせに行こう。




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