プロローグ

勝利だギューちゃん

第1話

あてもなく、さまよい歩く・・・

どこまでも、歩く・・・


後方には海・・・前方には山・・・

海と山に囲まれた、のどかな村・・・


村人全員が顔見知り・・・

この村には、今の日本人がなくしてしまった、人情がある・・・


たまに観光客が来ると、例外なく口にする・・・

「タイムスリップしたみたいだ」と・・・


空を見上げると、とんびが飛んでいる・・・


「疲れたな・・・」


近くの食堂に入る。

この村では、皆がこの店の常連・・・

そのため、注文する前に、こちらの食べたいものが運ばれてくる・・・

誰が何時に来るのかが、わかっているようだ・・・


食事を終えて、外に出る。

外は雲行きが、怪しくなっている。

「傘持っていきな」

店内から、従業員の声がする。


ありがたく、借りた・・・

この村には、悪人はいないのだ・・・

そう・・・

1人も・・・


しばらく歩いていると、本格的に振りだしてきた・・・

借りた傘をさして、歩く・・・


村の人は、自分の仕事に忙しいが、それでも互いの挨拶はかわさない。

「挨拶だけはするように」

そう教えられて、育ってきた・・・

実際にそうしている・・・


いつまでも、こうしていたい・・・

時が止まればいい・・・


でも、それは叶わぬ願い・・・

時は止まらない・・・

ただ・・・


駅にたどり着いた・・・

この村で、ただ一つの駅・・・


「行っちゃうんだね・・・」

ひとりの女子高生が、声をかけてきた・・・

「ああ」

「また、寂しくなるな・・・」

「大丈夫だ・・・また帰ってくる・・・」

「ここは、俺の故郷だ・・・」

「じゃあ、餞別」

頬にキスを受ける・・・


駅舎からホームへ歩く・・・

入ってきた列車に乗り込んだ・・・


1両だけの、ディーゼルカー・・・

適当に、ボックスシートに腰を掛ける。


しばらく車窓を眺めていると、車掌が話しかけてきた。

「いかがでしたか?今回も楽しんでいただけましたか?」

「ええ、楽しかったです。」

「それは、何よりです。こちらとしても、お客さんに喜んでいただけるのが、何よりです」

「こちらこそ、今回もありがとうございました。」

「草野様には、いつもご利用いただき、真に恐縮です。」

「いえ、私の憩いの一時ですので・・・」

そのような、やりとりが続く・・・


「いかがでしょう?今度はもっと上のコースがありますが・・・」

「いや、これでいいですよ・・・」

「かしこまりました。ご予約はいかがいたしましょう」

「じゃあ、・・・・で、頼みます」

「かしこまりました」

車掌は、会釈をして去って行った・・・


人生に疲れた者のために、作られたイベント・・・

忘れかけていた何かを思い出させてくれる・・・


また来よう・・・この場所へ・・・

そして、会おう・・・

人情味あふれる人々に・・・そして、あの子に・・・

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プロローグ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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