人間だった俺、寝て起きたらアンドロイドにされていたので人類のために戦います❗️

石井蓮

第一章『入隊と初任務』

第1話

 突然だが、皆さんはアンドロイドと聞いてどんなものを思い浮かべるだろうか?

 人間の形をした機械が、やや不自然に動き回り、ペラペラと奇妙なイントネーションで知的な事を話すような物を想像した人も多いのでは?

 だが、この世界に蔓延(はびこ)るアンドロイドたる物はそんな物ではない、もはや『人間よりも人間らしい《者》』である。

 この物語を読む上で、せめてこれだけは理解してほしい。これは俺からの純粋なお願いだ。




 時は二一九七年。皆さんの住む世界よりも二百年近く時が経ったこの世界で、俺__すなわち柳希輔(やなぎきすけ)は生き長らえていた。


 家族構成は父母と俺の三人。可愛い弟や妹、頼りになる兄や姉などはいない。


 夜、大学から帰ると、真っ先に俺を出迎えてくれる人がいた。そう、__静寂だ。

「はぁ」というため息が、家中に響き、夕焼けで橙色に染まった壁の中まで染み渡る。

 これはいつものことだ。両親は仕事で忙しい。

 静寂に足止めされた俺は、ようやく靴を脱ぎ始める。

 そのとき、台所の方からカチャカチャという、食器が触れ合う音が。


__誰かいるのか……?


 俺は好奇心に後押しされ、恐怖心に心臓を揺らされながら、ゆっくりと台所の方に近づき、そっと覗く。


……アンドロイドだった。台所にいたのは家庭用アンドロイド。そういえば今日は両親の帰りが遅くなるからと隣の家からお借りしているんだった。

 その家庭用アンドロイド見た目はいかにも『家政婦』みたいなおばさんで、お世辞にも綺麗とは言えない黒い髪を後ろで留めていた。


「あ、おばさん! 今日はご飯いらないから! 父さんと母さんの分だけ作ってねー」


 おばさんというのはその家庭用アンドロイドのことだ。正直言って話しかけたくはなかったが、俺は無理に話しかける。我ながらすごいと思う。それが口調に一切出ていない。


「…………」


 家政婦おばさんアンドロイドは俺をチラッと見たが、一言も喋らず、ただ黙って目の前の食器を洗っていた。つまりあれだ。俺は無視されたということだ。……クソババア。


 クソババアに気分を害された俺は少々気を悪くしたまま、階段を登り、二階にある俺の部屋に向かう。


 だが階段を登っている最中で、俺の不機嫌はどこかへ行ってしまった。なぜか。__これから楽しいことが待っているからだ!


 俺は自室のドアを開ける。

 部屋に入ってすぐ横では、たくさんの銃(トイガン)が飾っているガンラックが、帰ってきた俺を出迎えてくれた。


 俺はその中から一番のお気に入りを手に取り、小さなマンターゲットを部屋の隅に立て、弾倉(マガジン)に球を込め、じっくりとじっくりと的に照準を合わせ、「いいもんぶち込んでやるよ」と聞く人は皆誤解するであろうセリフを息と共に吐き出し、引き金を絞る。


 ここまで来たらわざわざ言う必要もないだろうが、俺の趣味は『お座敷シューティング』だ(正確にはお座敷ではないが)。

 俺は銃の持つ魅力に惹かれ、お年玉、貯金、小遣いのほとんどを散財した。


 本当はサバゲーたるものをやってみたいのだが、俺にはそれをするだけの財力と勇気がない。だから俺は家の中で銃を撃って、バガンッバガンッと電動ガン特有の軽くて重い音を家中に響かせている。


 これがたまらなく気持ちいい。球が当たった瞬間、的が鋭い金属音を立てながら倒れる。この瞬間と音がこの俺を魅了する。


 その日は無我夢中で撃ち続けた。一言も発さず、部屋には銃の発射音と的の金属音のみ__。俺は興奮の境地に達していた。俺は何者かに取り憑かれたようだ。


 そして気づけば窓の外は真っ暗で、時計の針は一〇時を回っていた。

 少し冷静になったのか、眠気が襲いかかる。

 俺はすぐにシャワー浴びに行き、時刻は一〇時半。


 下の階からクソババアが水仕事をする音が聞こえる中、俺はベッドに横になり、静かに眠りについた……。


 全く俺は呑気なもんだ。……この後何が起きるのかも知らずに。


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