とあるお寿司屋さんの水槽の中

BrokenWing

とあるお寿司屋さんの水槽の中

 とある、お寿司屋さんの水槽の中です。



 綺麗なピンク色をした鯛が言いました。


「ね、これから私たちどうなるの?」


 足の一本とれている烏賊が答えました。


「外を見てごらん。あれは、さっきまでそこに居た鯵君じゃない?」


 鯛は水槽の外を見ました。


「ん~、よく見えないけど、そうみたい。あ、私が昔住んでいたとこでご飯くれていた奴みたいなのが食べてる!」


 烏賊はうつむきました。


「俺達もそうなるんだろうね……」


 大きな網がいきなり入ってきました。


「あ。。。烏賊君!」


 網は、墨を吐いて逃げる烏賊を容赦なく包みこんでから上に消えました。


 鯛は考えこんでいます。目の前にはさっきの烏賊が残した墨がまだ残っています。


 すると、墨の中から、二つの目が眩く光りました。


 鯛はびっくりして聞きました。


「あなたは誰?新入り?」


 光る目が答えます。


「おや?私が見えるのだね。すると君も考えることができる種族のようだね」

「???」

「まあいいや、僕は……、そうだね、ただの新入りでいいや。君達とは違う理の存在だけどね。そうだ、君が考えていることに答えてあげよう」

「じゃあ、聞いていい? 私たち、やっぱり食べられちゃうの?」

「このままだとそうなるね」

「なんで食べられちゃうの? 食べている奴はなんなの?」

「食べている奴は人間って種族だ。君達は彼らが生きるために必要だから食べられる。君に至っては、その為にのみ彼らが生を与えた存在だ」

「そうなんだ。。。でも、なんか不公平じゃない? 人間って奴も食べられないの?」


 光る目は少し考えてから答えます。


「彼らも君同様、大昔は食べられる種族だった。だが、彼らを知恵を授かった。そして、彼らを食べる種族よりも強くなった。だから、彼らは、今は滅多なことじゃ食べられない。逆に君たちは、知恵もなく、弱いから食べられる」


 鯛はひれをひくひくさせて聞きました。


「じゃあ、私達も知恵っていうのがあれば、強くなって食べられなくなるの?」

「そういうことになるね。ただ、かなりの時間が必要だけどね」

「ふ~ん、私もその知恵ってのが欲しいな。。。食べられるの嫌!」


 光る目はまた少し考えてから答えました。


「今の君だけが知恵を授かっても未来は変わらない」


 鯛はがっくりして言いました。


「残念。。。やっぱり食べられちゃうんだ。ところで君はなんでそんなこと知ってるの? 君は何者? ひょっとして神様? 名前はあるの?」


 光る目は悲しそうに答えます。


「僕は神ではない。ただ、人間に知恵を与えた存在。名前は色々ある。サタンとか、ルシファーとか。全知全能である神が、僕が人間に知恵を与えることも知って創った存在。せっかく知恵を授けたのに、人間には恐れられ、嫌われる存在」



 烏賊の残した墨は薄くなり、光る目も消えました。

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