1章第3節 変革の凱旋
(どんなに最悪な状況だろうと、悪い奴等の所にいち早く駆け付けて、逆境をどうにかするのがヒーローの役目なんだよ!)
ジャガイモは岩陰に身を潜めているサツマイモとサトイモを庇うべく、単身で校舎を壊した連中と相まみえた。こうして相対するまでは隠れて聞き耳を立てていただけで声しかわからなかったが、見えることによりその姿が視認できた。目の前にいるのは、声を聞いていた限りの三人。
(見たところ、俺と同じかちょい上って感じか・・・。)
ジャガイモは三人を一瞥して風貌や雰囲気から年齢を判断し、そう心の中で感想を漏らした。
見た目から分かる三人の個々の特徴としては、真ん中の奴は、ゴーグル、インカムを着けており上着として大層なミニタリーコートを纏っている。そして何より不敵な笑みで品定めする様にこちらを見ている。
その右の奴は、見た目で分かるほど妖艶さを醸し出していた。髪は長くたなびかせ、服装は少々露出が目立つといったところか。そしてなにより目を惹かれるのが彼女に背中にある大きな羽だ。その羽は蝶のそれに酷似したもののように見えた。彼女もまた不敵な笑みでこちらを見つめている。
そして左の奴。奴の身なりは豪華に着飾られており、こう言ってはアレだが校舎を壊した犯人にしては似つかわしくない装いだった。視線はこちらを向いておらず、いささか不機嫌そうにも見えた。しかし、その佇まいは威圧感がありこちらが圧倒されそうになるほどだった。
そんな連中にジャガイモは恐怖とプレッシャーに足がすくんでしまう程だったが、なんとか思い留まり連中に向けて言葉を投げかける。
「まず、俺には戦うつもりはない。ただあんたらが何者で何の目的があるのか聞きたい。」
そう言ってジャガイモは戦闘の意志がないことを示す。その証明として両手を軽く挙げ武装していないことを相手に見せた。校舎を半壊させたテロリストに変な刺激を与えるのは良くないと判断してのことだろう。
一連の様子を陰で隠れているサツマイモとサトイモは不安げに聞いている。ジャガイモ一人で危ない奴等の前に立たせているのだ。心中は穏やかではない。
ジャガイモの投げかけに真ん中の奴が反応した。
「へぇ、素直に出てくるんだな。俺としてはここで、『よくも学校を壊してくれたな!!』って感じで熱いバトルとか期待してたんだがなぁ。」
心底残念そうに言うと、左の豪華に着飾った奴が
「フン、どうせ結果は見えている。やるだけ無駄だ。」
と呆れた様子で答えていた。随分と好き勝手言ってくれる。しかし現状ジャガイモ一人で、どの程度の強さかも不明、武器の有無も判断着かない状態で校舎を半壊させた奴ら三人を相手するのは無謀というものでジャガイモ自身もそれは重々理解しているため大人しく様子を伺っている。
呆れた返答に真ん中の奴は
「だよねぇ。」
と気怠そうに応答した。どうやらその言葉に嘘はなく本心からのようだった。学校に乗り込み破壊活動に至った位だ。相当実力に自信があってのことだろう。
しかしジャガイモからしたら、いくら頭でわかっていてもなめられていることに対し気に食わないものは気に食わないので
(随分好き勝手言ってくれるじゃねぇか。だが、ここで争いがおきればサツマとサトに被害が出るかもしれねぇ。ここは穏便に済ませてやるがいつか覚えていやがれ!)
と心の内で思ったがそれは一度抑え込み
「お前たちは一体何者で何が目的なんだ!?」
と先程の問いかけより語勢を強くして詰問した。
そんなジャガイモに対し、再び真ん中の奴が不敵な笑みを浮かべこう言い放った。
「俺達は時代の変革をもたらしに来た。」
奴らの周囲に怪しい風が吹いた。それはまるで、これから起こる何かの前兆かの様に。その風は不吉と不穏を孕む嫌な風だった。
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