1章第1節 災厄の兆し
学校というものはチャイムで始まりチャイムで終わる。そして今日も今日とてチャイムが鳴る。不思議なことにチャイムというものは鳴るタイミングによって感じ方が変わるものだ。始業のチャイムは憂鬱気味に、終業のチャイムは解放された気分になる。そしてどうやら、先程のチャイムはどうやら終業のチャイムだったらしい。学院の生徒達が心なしか晴れやかな気分に包まれている。勿論、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモの三人も例外ではない。
本来ならこの後生徒達は部活に励むのだが、ジャガイモ達は部活動やサークル活動といった類のものをしていない。俗に言う帰宅部という奴だ。なのでいつもならこのまま三人で一緒に帰宅するのだが、今日はジャガイモに呼ばれて校舎の屋上で黄昏ていた。
「いや~、突然呼び止めて悪いな。」
ジャガイモは帰路に就こうとしていた二人を呼び止め脈略無く校舎の屋上に行こうと言い出したのだ。二人は、別段用事もなかったのでジャガイモの言われるがまま屋上についていった。そうして今に至るのである。
しかし、突然のことに疑問も持ったサツマイモが
「それは全然いいんだけど、どうしたの急に?」
と尋ねた。突然の事に驚きはしたもののジャガイモのことだから何か考えがあってのことだろう。
「いやな、特にこれと言った理由はねぇんだけどよ。なんか無性に空が見たくなったわけさ。」
そう言うジャガイモの様子はいつもの快活な雰囲気とは違い、アンニュイな感じでジャガイモは言った。
「わかる!わたしもたまーに空見上げたくなることあるもん!」
サトイモはいつもの調子でジャガイモに同意を示した。芋とは言え感情がある。無性に空を見上げたくなることもあるのだろう。
そして、また一人。広大で澄んだ茜色の空を見上げている人物がいた。
「空はいいよなぁ。吸い込まれちまいそうだ。」
そう感嘆を漏らしていると
「何クサイこと言ってるわけ?さっさと作戦開始するわよ。総隊長さん!」
妖艶な声が横槍を入れてきた。
「あぁ。それじゃあ野郎共!準備は良いか!?」
先程まで空を眺めていた青年は、妖艶な声に我に返り指揮を執った。
「「「「「おぉ~~!」」」」」
100は下らない大量の芋の集団が青年の指揮に返答した。
「よ~し!目標は[私立御芋ヶ峰学院]校舎。そこを破壊し俺達の存在をあいつらに知らしめてやろうぜ!」
「「「「「おぉ~~!」」」」」
再び大量の声が響き渡った。
「さぁ、総隊長さん。合図を。」
先程の妖艶な声が青年に話しかけ、青年はより一層腹に力を籠め
「では、これより作戦を実行する!さぁ、ひと暴れしちゃいますか!」
こうして、青年率いる謎の集団がジャガイモ達の学院を破壊するべく進行を開始した。
一方、学院では。相変わらずジャガイモ達が校舎の屋上で黄昏ていた。
「屋上に来てもらったのは、久々に三人集まって話そうと思ってな。」
重々しい切り出しにサツマイモとサトイモは生唾を飲む。そして、ジャガイモから出た言葉は
「最近、退屈じゃね?」
といささか拍子抜けするものだった。これには思わず二人とも
「「へ?」」
と特大の疑問符を浮かべた。無理もない、いつものジャガイモの雰囲気とは似つかわしく無く身構えていたらこれなのだ。そんな二人の様子に、ジャガイモは慌てて補足をする。
「いやな、こうして毎日のほほんと生活してて平凡過ぎてつまらんって思っちゃったわけさ。」
「まぁ、それは分からなくもないけど・・・。」
サツマイモが一応頷くと、
「だろ!だからさ、ここらで一発ドカンって起こらねぇかなって!」
と喜々として話を進めた。
「あっ!それ[フラグ]って言うんだよ、前に本で読んだことある!」
ジャガイモがいつもの調子で嬉しそうに話すのか、サトイモも嬉しそうに相槌を打つ。しかしサツマイモは[フラグ]という言葉が引っ掛かり
「そんなこと言ってると本当に何か起こっちゃうよ?」
心配そうにジャガイモ達に言った時、どこかで大きな爆発音が聞こえた。サトイモは慌てた様子で自分達がいる校舎とは別の校舎を指差し
「ちょっと、ちょっと!学園の本校舎から煙が上がってるよ!?」
と報告すると、ジャガイモとサツマイモはそれぞれ
「マジか!?」
「ほら!言わんこっちゃない!」
と反応を示した。そして続けざまにジャガイモが
「まぁまぁ。丁度退屈していたところだし面白そうだから行ってみようぜ!」
喜々として自ら危険地帯に赴こうとするので、慌ててサツマイモが
「え?あぶないよ、サトからも何か言ってよ!」
とジャガイモを制止しようとし、サトイモに同意を求めたが
「私も丁度退屈してたんだ!ねぇ、行ってみよ?」
と寧ろジャガイモに乗り気で、ジャガイモもそれに便乗し
「サトもこう言ってるし、2対1で行くことに決定だな!」
と半ば強引に爆発の起こった本校舎に向かうことになった。この時ばかりは、サツマイモは民主主義を呪った。そしてやけくそ気味に
「もう、どうなっても知らないからね!」
と言い放ち二人について行った。
この行いが後に引き金となり、三人はこれから始まる戦いの渦に巻き込まれるのであった。そして、この事件を境に三人は目まぐるしい成長を遂げるのである。
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