第15話 同期の遊びへの誘い(2)

その秋本君は2年前に見合い結婚した。結婚式と披露宴に招待されたが、7歳も歳下のなかなか可愛いお嫁さんだった。彼はとても嬉しそうだった。是非にと友人の挨拶も頼まれた。


彼との付き合いはその時まで本社で3年位あった。秘密の共有があったからか、仕事で困ったことがあるとお互いに相談にのったり協力したりした。


事務系の彼は、僕のような研究系とは発想が違っていて、教えられることも多く、随分助けられた。だから、内容には気を使った。当り障りのない美辞麗句で挨拶をまとめた。


新婚旅行から帰ってしばらくしてから、会議で一緒になったので、結婚してどうだったか感想を聞いてみた。僕がお見合いを始めたのはそのころからだった。


「吉川君のお陰で結婚できたと思って感謝している。あのとき一緒に行ってくれなかったら今も悶々としていたかもしれない。男としての自信も付いてきたので、結婚する気になった。それに随分修行させてもらったから、あっちの方も問題なくうまくいった」


「そうか、秋本君の努力の結果だ。よかったな」


「彼女はバージンだった。間違いない」


「どうして分かる? 聞いたのか?」


「いや、聞くまでもない。直感的に分かった。それに1週間もうまくできなかった。痛がって」


「1週間かかっても、バージンがよかったのか?」


「そりゃバージンがいいに決まっている。自分が初めての男だと思うと嬉しくないか? でもなあ、バージンがいいというのは、男のコンプレックスの裏返しかもしれないね。他の男と比べられるのがいやなんだ。彼女には自分が一番と思ってもらいたいからな」


嬉しそうにそう言っていたのが印象的で今もよく覚えている。


◆ ◆ ◆

秋本君が結婚してから一緒に行くことはなくなっていたが、1年位前からまた一緒に遊びに行くようになっている。秋本君の方から誘ってきた。


「ええ、奥さんがいるんだろう。いいのか?」


「子供が出来てかまってもらえないし、刺激にもなるので、たまにはいいかなと思ってね」


「浮気症だったのか?」


「素人さんとは絶対に浮気しない。まあ、そう言っても不器用な僕には所詮ありえないけどね」


「割り切っているんだ。でも気に入って何回か同じ娘に通っていると、気心が知れて来て、情が移らないか?」


「そうだなあ、それはある。セックスってそういうものかも知れないな。気心が知れてきて安心みたいな、だから、なじみになって、指名する」


「恋人に会いに行くような?」


「そうだな、愛人に逢いに行くような感じかな。でもな、どんないい娘でも僕は5回ぐらいで飽きてしまうんだ。そして浮気してまた別の娘を探し始める。これは僕のオスとしての本能かも知れないな」


「やっぱり、浮気症だな。じゃあ付き合おうか、こちらもしばらくご無沙汰していたから、丁度いい。費用の方は大丈夫か?」


「ああ、独身の時に貯めたへそくりがあるから心配ない」


「じゃあ、どうする」


「ウイークデイの7時ごろからでどうだ。土日は家にいることにしているから」


「いい夫だな」


「予約は俺の方でしておくから」


「まかせた」


それからは、二人の仕事の折り合いがつけば、ウイークデイの晩に一緒に行っていた。秋本君は奥さんには会社の会合があって飲んで帰ると言っているそうだ。奥さんに疑われたことはないと言っていた。


◆ ◆ ◆

ここのところ、僕が理奈とお見合いしてから、式の準備で何回か帰省したり、新居へ引越ししたりして忙しく、ウイークデイの夜の時間もずっと彼との折り合いがつかなかった。


昼食を食べながら、やはり例の話になった。ここのところ、同居生活も落ち着いてきたが、理奈との関係には大きな進展がないので、僕も少し欲求不満気味になっている。だからこの誘いには乗ろうと思っている。


「吉川君が忙しそうで都合がつかなかったから、しばらく行っていないけど今週位どう?」


「いいよ、3か月位は間が空いたかな」


「いつなら都合がいい?」


「水曜日か木曜日は会議もなくて早く終わりそうだ」


「それなら木曜日にしようか。当日の3時にもう一度都合をメールで確認する。それから予約を入れるから」


「じゃあ、そういうことで」


久しぶりだから楽しみだ! 理奈には絶対に分からないようにしなければ!

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