第14話 同期の遊びへの誘い(1)
(11月第1月曜日)
同居生活を始めてから2週間ほどたった。ようやく生活にリズムができてきた。理奈も家事に慣れてきたようでゆとりが出てきた。相変わらず夜は別々に休んでいる。
お風呂はどちらが先に入るかはきまっていない。でも、二人ともソファーで上がって来るのを待っている。
最初の晩に理奈がお風呂で寝込みそうになったことがあったから、意識してそうしている。僕は理奈が寝込んだら、これ幸いと鍵を開けて助けにいこうと思っている。
二人の入浴が終わると、おやすみのハグをすることにしている。今はこれが理奈の受容の限度と思っている。僕は今のところこれ以上のことは期待していない。疲れていなければ部屋でAVを見て寝ることもある。おやすみなさい。
◆ ◆ ◆
(11月第1火曜日)
火曜日の午前中に新製品のプロジェクト会議があった。僕もメンバーの一人だ。お昼前に会議が終わったところで、同じメンバーの一人で同期の秋本君が昼飯を一緒に食べようと言ってきた。例の話かなと思って一緒に食事をした。
同期の秋本君は入社した時の新入社員研修で知り合った。僕のことが気になったのか、話しかけてきたので親しくなった。彼は都内の有名私立大学を卒業した事務系だったが、出身は地方だった。そのあたりが気の合った理由だったかもしれない。
研修が終わって、僕は研究所へ、彼は本社へ配属された。その後、彼は地方勤務になって、再び本社へ戻ってきていた。
◆ ◆ ◆
僕が30歳で本社へ異動になった時、食堂で偶然一緒になった。久しぶりだった。「ちょっと相談があるから今晩一杯やらないか?」と誘われて、新橋駅近くの居酒屋で飲むことになった。
「聞きにくいことだけど、吉川君だから聞く。ソープへ行ったことはあるか?」
「うーん、あまり人に話すようなことではないけど、入社したときに何事も経験と思って2~3回行ったことがある」
「このごろはどうなんだ?」
「ここのところは行ってないけど」
「一緒に連れて行ってくれないか?」
「大体そういうところはひとりで行くもんだぞ」
「頼むよ、経験してみたいんだ。恥ずかしながら、そういうことに疎くて、そろそろ結婚を考えているし」
「そうなんだ」
「頼むよ、連れて行ってくれないか?」
「分かった。最近はどうなっているか分からないけど、調べてみてあげる」
「一緒に行ってくれるのか?」
「ああ、久しぶりに行ってみようか」
秋本君から頼まれたのでそのあたりをネットで調べてみた。これだけは言えるが行って入って見なければ分からない。良さそうなところを2か所ほど見つけて、次の日に秋本君に話した。
「ここに2か所、良さそうなところを見つけた。評判もいいようだし、値段も手ごろだ。でも満足がいくか保証できないけどいいか? どちらか選んでくれ、自己責任ということで」
「ありがとう、それは承知の上だ。吉川君が選んでくれ」
「分かった。じゃあ、この1つ目にする。今度の土曜日は空いているか?」
「空いている」
「土曜日の午後1時に待ち合わせしよう。2時に2名の予約を入れておくから」
「よろしく頼む」
土曜日の午後1時、地下鉄の出口で待ち合わせをした。1時少し前に秋本君が緊張した面持ちで現れた。
「手数をかけてすまんな」
「いや、こんなことでもないと、行くきっかけがないから気にするな。僕も楽しむから。じゃあ、予約確認の電話を入れるから」
「すまんな」
「行こうか、歩いていくぞ」
二人は店の方に歩いた。場所はネットで確認してある。歩いていくと丁度いい時間に店に着ける。
待合室には他に客が2名いた。予約のときにチョイスできるか確認しておいたが、入店の時も確認した。ボーイさんがアルバムを持って来て見せてくれる。
「彼はあまり慣れていないので、親切な人がいいんだけど」
「それなら、この娘が良いと思います」
「どうする?」
「そうする」
「彼はあまり慣れていないので彼女にもそう言っておいてもらえますか?」
「分かりました」
「僕はこの娘にします。それから、帰りも一緒に帰るから待たせて下さい」
すぐに秋本君が呼ばれた。彼は不安そうに出て行った。僕は久しぶりだったが、あのころからは年齢を重ねていることもあって、落ちついて楽しむことができた。十分に元は取れている。
帰りの待合室で秋本君が待っていた。その表情からして満足したみたいだった。帰りに一杯飲もうと言うので、新橋駅近くのビアホールへ行った。
「ありがとう、よかったよ。なかなか親切な娘でそのとおりだった」
「店の人は良く性格を知っている。帰りにアンケートを書いただろう。それで分かっているみたいだから」
「それで聞いてくれたのか、恩にきる」
「当り外れはあるみたいだから二人とも運がよかったのかも。僕も良い娘だった。あの店は評判どおりかもしれないな」
「実は今日初めて経験したんだ。このことは誰にも言わないでくれ」
「ひょっとするとそうじゃないかと思っていた。変に思いつめていたから」
「機会がなかったと言えばそうだが、僕には吉川君のようにこういうことには度胸がないから」
「誰にも言わないから安心してくれ。それじゃあ、お祝いに乾杯しよう。おめでとう!」
秋本君は今日のお礼だと言って奢ってくれた。
それからは、秋本君から誘われて月に1回位、一緒に遊びに行くようになった。僕は嫌いな方ではないが、きっかけがないと行くようなことはないので、誘われると付き合っていた。
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