約束

勝利だギューちゃん

第1話

「約束よ、待ってるね」


目が覚める。

海へと向かう列車の中にいた。

ボックスシートに腰を下ろしている。

客はまばら・・・

4人掛けのボックスシートを、占領している。

ちょっとした、優越感だ・・・


車窓から見える景色は、だんだんと海へと近づき、

青い水平線が見えてくる。


「もう少しだな・・・」

時計に目をやる・・・

「そろそろ、準備をするか・・・」

もうすぐ目的の駅に到着する・・・


準備と言っても、手に持つは鞄一つ・・・


程なくして、目的の駅に到着した・・・

ここで降りる客は、俺ひとりだけらしい・・・


駅舎を出ると、既に目の前は海だ・・・

だが、俺は海には用はない・・・

横目に見ながら、目的地へと向かい歩きだす・・・


タクシーが停まっていたが、俺は乗らなかった。

タクシーのほうが、早い・・・

でも、俺は徒歩を選択した・・・


自然と足ははやまる・・・

興奮とか感動とか、そんな大げさなものではない・・・


でも・・・でも・・・


不思議と目頭だけが熱くなっていく・・・


人は出会いと別れを繰り返す。

そして、別れてしまえば、その人の記憶は薄れて行く・・・

ただ、それが自分にとって特別な人なら、別になる・・・


この村には、高台に墓地がある。

俺の目的は、そこだった。

あるひとつの墓の前に、俺は立つ。


「来てくれたんだね」

「ああ」

「ありがとう。」

「約束だからな・・・」

「でも、嬉しいよ・・・」


墓石をきれいに洗う。


「今、どうしてるの?」

「変わらないよ・・・」

「君らしいね」

「悪かったな」

「でも、私は今のままの、君が好きだよ」

「だよ?」

「うん、過去形にはしない・・・」


花を添える・・・


「覚えていてくれたんだ、私の好きな花」

「この季節しか咲かないからね。だから、ずらした」

「ここには、ふさわしくないかも・・・だけどね・・・」

「そういうのは気にしない」


変わらない会話に、心地よさを感じる・・・


「私か君に、アドバイスしたこと覚えてる?」

「ああ」

「言ってみて」

「『少しでいいので、昨日の君を超えてみて』」

「正解」


これ以上いると、さすがに辛くなる・・・


「じゃあ、また・・・」

「待って」

「何?」

「また来てね。その時は、今日よりも素敵になった君を見せて」

「ああ、約束するよ」

「楽しみにしてるね。ありがとう」


俺は帰路につくことにした・・・

彼女が、手を振っている姿が、わかる・・・


次に彼女に会える時は、今の自分よりも、素敵になっているのか・・・

それは、俺の努力次第・・・


彼女の声が聞えてくる。


「約束よ、待ってるね」






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約束 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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