第23話あなたのなみだはどこからきたの

23 病床日記(いつか青空)

P 8.19 Saturday 熱6~7

●気づいてみると、きょうは土曜日だ。

美智子さんは「日曜日にまた来るわね」といっていた。

「六時ごろね」彼女はそういって帰って行った。

●あるいは……。

あるいは、きょう来てくれるかもしれない。

と期待してはいけないのだろうか。

いつも、いつでも、そばにいてもらいたい。

●きょう、会うことを期待するのは、はかない望みなのだろう。

●彼女の昨夜のなみだが気になる。

どうしてぼくになみだの理由をいってくれないのだろう。

耐えられないほど悲しいことがあった。

だったら、なぜぼくにいってくれないのだろう。

それほどぼくは頼りないのだろうか。

あるいは、悲しみをうちあけるほど親しくはない。

とでもいうのだろうか。

つまらないことで。

ながしたなみだなので。

恥ずかしくていえない。

のならいいのだが。

●あなたのなみだはどこからきたの。

なぜなみだをこぼしたの。

きらりと光ったなみだはどこからきたの。

なぜひとはなくのだろう。

なみだはなぜながれ、ひとはなぜ感情をおさえられないのだろう。

悲しいとなく。うれしければわらう。

あなたのなみだはどこからきたの。

それはなみだにしか、わからないのかもしれない。

●ああ、ぼくには詩を書く才能はない。

こんなこと書かなければよかった。

恥ずかしいよ。

●寂しい宵を過ごした。

暗闇で書いたこの一行、あすの明るみのなかで読めるかな?


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