セルキー

勝利だギューちゃん

第1話

夏の間は、あれだけ賑わっていた海も、

秋の足音が近付くにつれ、その数は減っていく・・・

そして、秋になれば、静かな海となる・・・


ふきぬける、風が冷たいが、とても、心地いい・・・

秋の海は、僕とよく似ている・・・

「周りに誰もいない・・・」

共感を、感じてしまう・・・


時間があれば、この海にやってくる・・・

そして、時間の許す限り、浜辺に立ち、海を眺める・・・

時々冷たい視線を感じるが、気にしない・・・

いつもの事だ・・・


「あれ、今日も来てたんだ」

その声に振り向く・・・

見慣れた顔が、そこにある。

名前の知らない女子高生・・・

少し前に知り合った・・・


「・・・やあ・・・」

それだけ言うと、視線を海に向ける。

「海っていいよね・・・」

「ああ」

「特に誰もない、秋の海が静かで好き・・・」

「そうだな・・・」

いつもの、やりとりが続く・・・


彼女と知り合ったのは、去年の今頃・・・

彼女も秋の海が好きらしく、どちらかともなく、話すようになった・・・

「話す」といっても、多少の言葉のやりとりで、会話とまではいかない・・・


干渉はしない約束で、互いの連絡先はもちろん、名前も互いに教えていない。

分かっているのは、性別だけだった・・・


ただ最初から、タメ口で話していた・・・


陽も暮れてきた。

さすがにこの時間は、応えるだろう・・・


彼女は、「それじゃあ」と言って、先にその場を去った。

俺はもう少し、海を眺める事にした。


普通なら、彼女に何らかの興味を抱くだろう・・・

でも、僕は不思議と抱かなかった・・・


おそらく、彼女の方も・・・


そして、彼女は人間ではない・・・


     「ねえ、私の事、もうわかっているよね?」

     「ああ、人間ではない・・・妖精だね・・・」

     「当たり、さすがだね。では、何の妖精かわかる?」

     「リャナン・シーではないね。もしそうなら、僕はとっくにあの世にいる」

     「正解。では、何でしょうか?」

     「セルキー・・・だね・・・」

     「さすがだね。なら、私の本当の姿を知っているよね」

     「もちろん」

     「私の皮は、盗まなかったんだね」

     「ああ」

     「どうして?」

     「君との今の関係が好きだから・・・」

     「ありがとう」


短いような、長いような、夢を見た。

夢の中で、夢と自覚できる、そんな夢だった・・・


次の日も、僕はいつもの浜辺に来た・・・

誰もいない、海を眺める・・・

それが、僕の憩いの一時だった・・・


「素敵ですよね・・・」

聞き覚えの声がする。

僕は、彼女の方は向かず、海を眺めながら答えた。

「そうだね・・・セルキー・・・」


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セルキー 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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