2019年4月(2)

 廊下で顔を見合わせる3人。摩耶まーやが聞いた。


「二人、ソロ組合の人って誰か知ってる?」


 比嘉ふみよが上を見つめていたかと思うと一言。


「あの人かも」

「誰なん?」


 そう言って比嘉ふみよの肩をつかんで揺する中谷ちゅうやちゃん。揺するなよ、もう。あんただって知ってると思うよ。


「ベースの人。1つ上の女子の先輩がいたでしょ。覚えてないの?」

「あ」


 3人ともあの孤高の先輩は知っていた。変わってたから、なーんて事は北見先輩の前じゃ言えないな。

北見朱里きたみあかり先輩。ウッドベース、エレキベースを操る魔女にして何故か服飾デザインにも通暁している。船に乗りたくてという夢があったのか、うちに進学してきた。


 女性部員というかバンドメンバーは女子学生数が増えたといっても知れているので多くない。そしていたら大抵はヴォーカルとかでバンドのコアメンバーに入っている。

 この人の場合は楽器がベースで歌わない。気に入ったバンドもなかったみたいでソロ組合に入って他のソロの人と組んでライブに出たりとかそんな感じで去年は活動していたらしい。


 3人は北見きたみ先輩に会おうと早速女子学生寮でに戻ると部屋に行って見たがいなかった。


 幼馴染だとかでじゃれ合う摩耶まーや中谷ちゅうやちゃんと連れ立って北見きたみ先輩の部屋の前に行くとなんやら中華文化っぽいものがドアに貼ってある、なんだろ?これ。

そこに隣の部屋の2回生の先輩がトレーナー姿を通りかかった。


朱里しゅりちゃん?あの子なら元町でバイトだよ」


 すぐ摩耶まーやがお礼を言った。中谷ちゅうやちゃんは気が短かった。


「元町ならきっと中華街に違いない」

「何、その確信?」


ツッこみを入れる摩耶まーや

隣で比嘉ふみよが右手の拳で左掌をポンと叩いた。


「あ、なるほどね。中谷ちゅうやちゃんも結構考えることあるんだ」


 北見先輩の部屋のドアに逆さの「福」が貼ってあったのだった。「これぐらい常識よ。摩耶まーや、天才か秀才かって思ってたけど案外苦手な事はあるのね」ぐらい中谷ちゅうやちゃんが思っていそうかな。

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