・最終話「結夢」

 夢は眠るのだろうか。ドリムリーパーは眠るのだろうか。


 ドリムリーパーは、その問いにそうだと答えるわ。


 ではドリムリーパーは、どんな夢を見るのだろうか。


 私ドリムリーパーは、その問いに秘密を答えるわ。


 私が見るのは、夜眠って見る夢ではない。生きている人間が思い描く夢、希望、空想、願い、祈りの夢。


 色々な人間の描く夢を、私は見るのよ。


 人間で言う悪夢のように、醜悪な妄想の夢を見る事もある。


 物語の夢を見る事もある。それもまた、人が見たいと願う夢だからだ。良い物語の夢は大好きだ。


 あり得た可能性の夢を見る事もある。知的遊戯の楽しみも、何故こうならなかったという悲しみも。


 死の眠りにつく一瞬の夢も。


 そして夢の無い眠りをする事もあるし、死と同じ眠りをする事もある。私はそこから目覚める。私は夢だからあやふやなの。夢は、眠りは、死は、あやふやで不可思議なものなのよ。私は夢かもしれないし、元人間だった夢かもしれないし、死者の夢かもしれないし、生者の夢かもしれないし、これから生まれる者が見る夢かもしれない。


 そう言って、時に私は死の眠りにつく人を夢の世界に連れてゆく。別の夢へ、また別の夢へ、そのまた別の夢へ。


 何度繰り返しても尚、夢を必要とせずぐっすりと眠れない人を、新しい目覚めに連れてゆく。


 それがどういう形の目覚めか。その先に天国があるのか、それが輪廻転生と人が呼び習わす何かなのか、それともそれとは全く別で、人は同じ生を昨日眠った時の覚えていない夢のように忘れながら何度も同じ事を繰り返しているのか、あるいは、全ての人が、いずれ科学の果てにその存在を蘇らせられるのか。


 それは、分からないわ。私は夢の事しか知らないのだから。夢から目覚めた先のことは分からないのだから。


 それでも私は、人を夢から送り出すの。目覚めを齎す者でもあるドリムリーパーとして。


 ただ。


 眠りを不安に思う人。眠れない人。死の眠りを恐れる人よ。


 そういう人がこの物語を読んでいたら、私はこう言うわ。そういう人が、この物語を読んでいれば、私は幸いだと思うわ。


 夢と眠りの不思議は可能性なのだと思ってほしい。だから、眠る事を恐れないで。

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ドリムリーパー 博元 裕央 @hiromoto-yuuou

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