鍵
階段を覗き込むと、少し下りた先で踊り場になっていて、そこで折り返しになっているようだった。
普段暮らしている街の、地面の下を通る。きっと誰にも気付かれないだろう。
そう思うと、何だか変な感じがした。
そして同時に、昨日飛び出したっきりの家のことを思い出した。
自分は今、一体どんな扱いになっているのだろう。突然家に守護者が来て、姿を消した自分。行方不明だとでも騒がれているのだろうか。両親はどう思っているのだろうか。
父が、自分がいなくなったからと言って、取り乱す所を、ジウは想像できなかった。ただ、母はきっと泣いているだろうなと思った。
――母様が泣くのは、少し嫌だな。
ユキは、家を出る時、何か家族に言ってきたのだろうか。
こういう点では、一人暮らしのシノやアヤは、気兼ねのないことだろう。
「ね。アヤ。さっきジウに、アンタがいればここから出られるって言ってたでしょ?」
ジウがぼんやりとした頭でアヤとシノを見ていると、ジウの隣にいたユキが、アヤに質問を投げかけた。
「それに、さっきの、あの、剣がたくさんあった部屋に入った時も、ジウの目が光って扉が開いたよね。これってどういうこと?」
ジウは、自分の身に起きたことをユキに言われて思い出した。ついさっきのことなのに、すっかり忘れていた。
「それは、ジウがカギだからだ」
アヤは淡々と答えた。
シノが首をかしげて「かぎ?」と言った。
「ああ。あの記録書に書いてあったんだが、どうもこの通路は要所要所に魔術でカギがかけられているらしいんだ」
言いながら、アヤは皆を促して階段を下りた。
自然と全員がアヤに続く。
「何らかの条件を満たすことで、扉を開くための魔術が発動するようになってるんだ。その条件の一つが、ジウ、アンタだ」
アヤは、階段の踊り場で一度振り向いて、真っ直ぐにジウを見つめて言った。ジウは思わず息を呑んだ。
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