6年ぶりに小学校に登校してみよう。
みやざき。
今もまだ、はっきりと通学路を覚えている。
ふと思い立った。高校を卒業した記念に、小学校の頃通っていた街を訪ねてみよう、と。そして、昔住んでいたマンションから小学校までの通学路をまた歩いてみよう、と。
父は大手メーカーの会社員だった。人生で転勤は一度だけ、それが小学校と中学校の境目のタイミングだった。幼少期から一緒に過ごした友人、スーパー、クリーニング屋、目立たないけど美味しくて大好きだったパン屋、それらのものを置いて場所もイマイチ分からない新しい街へ行くのはとても不安だったと記憶している。
六年ぶりに見る公園は頭の中での公園よりはるかに小さかった。どこかへ飛ばされそうになってしまうのではないか、と不安になっていたブランコは腰掛けるのも窮屈なほどこぢんまりとしていて、ジェットコースターのようだと感じていた滑り台は自分自身の身長の二倍ほどの大きさしかなかった。日が暮れるまで友達と集めたBB弾はありふれたものだと知ってしまっているし、虫を触ることに抵抗が出てきてしまっている。一八歳になってしまったのだとつくづく実感させられてしまった。
数年前なら二、三十分かかっていた筈なのに、気がついたらもう小学校の校門まで着いてしまっていた。公園に立ち寄ったりしていたのに十分ほどで着いてしまった。小学生の頃はすぐあちらへ、こちらへと目線が動いていてかたつむりのような速度で歩いていたからあんなに時間がかかっていたのだろうか、それとも友人との帰り道が終わらなければいい、そんな気持ちが足を動かすことをゆっくりとさせてしまっていたのだろうか。
そんなことを考えながら二度と経験することはできない幼く、少し危なげながらも瑞々しい感性に思いを寄せながら、ぼんやりと校門の前で立ち尽くしていたところ、学校のチャイムが鳴った。下校の時刻らしく、静かだった下駄箱が瞬く間に喧騒に埋め尽くされ、息を吹き返す。
何故か離れがたく、賑やかになっていく通学路をこっそりと眺めていると、目の前を四人組の男子小学生がゲームの話をしながら通り過ぎていった。その光景は不思議とどこか幼かった頃の自分や友人と重なり、そして胸のうちに生じていた小さな寂しさを吹き飛ばし、大きな安堵と喜びをもたらした。
同じ道、同じ公園を辿ってきっと、同じように遊具やBB弾に心を躍らせる人が今もいる、そんな当たり前の事実が無性に嬉しく感じられた。
そういえば近くにパン屋があった、パンを買って今自分が住んでいる街、家に帰ろう。目立たないけど、大好きだったパン屋のパンを沢山持って帰ろう。。
6年ぶりに小学校に登校してみよう。 みやざき。 @miyashioi
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