第4話『春を発見する猛禽』
季節が春になる頃に、その年の様々な吉凶を占うために、特別に訓練した猛禽を放つ人々が居ました。
彼らは狩りをして暮らしながら、行く先々の鷹やフクロウなどと、不思議な友好関係を結びます。春先に訪れる場所は、その時々によって違いますが、春が始まる日の三日前から、三日三晩に渡って、猛禽類が自分たちのところに来た時刻、飛び去ってからどのくらいの時間で、何を持ってくるかで、その年の行く先の順と、次の春にはどの土地に行き着くかを決めるのでした。
彼らの文化はモンゴル帝国が世界を征服により途絶えてしまいましたが、馬だけでなく、鹿や、あらゆる動物を乗りこなし、巧みな弓術や投擲の技と罠の技術でチンギスハンを苦しめた記録がそこかしこに残っています。
世界に満ちていくものを知しり、それを利用して静かに生きてきた民族でしたが、モンゴルが世界に満ちていく勢いにはついには敵いませんでした。
彼らの猛禽や動物を使役する不思議な技術に興味を示したチンギスハンが、彼らを征服した折に、族長の一人娘をオルドに迎えようとしましたが、巨大な鷲の群れが飛来し、勇猛なモンゴル軍を蹂躙して、娘をつかんで空の彼方に飛び去っていきました。そして、地平のあらゆる場所から駆けてきた多くの動物の群れがそれに続き、わずかな残党はそれに乗じて逃げ去り、そのまま行方がわからずじまい。歴史からも完全に姿を消してしまいました。
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